東京2025世界陸上マラソン日本代表記者会見より、左から近藤亮太、吉田祐也、安藤友香、小林香菜 提供:日本陸上競技連盟/フォート・キシモト

(スポーツライター:酒井 政人)

男子が目指すは「上位入賞」

 JMCシリーズアワードの後には東京世界陸上マラソン日本代表会見が行われた。すでに発表された日本代表は以下の通りだ。

■男子
吉田祐也(GMOインターネットグループ)
近藤亮太(三菱重工)

■女子
安藤友香(しまむら)
小林香菜(大塚製薬)
佐藤早也伽(積水化学)

 日本代表は最大3枠で、男子はMGCシリーズⅣのチャンピオンに輝いた小山直城(Honda)が基準ワールドランキングによって5月7日以降、日本代表に決定する見込み。また男子の次点競技者は細谷恭平(黒崎播磨)、女子の補欠登録競技者は鈴木優花(第一生命グループ)が選ばれた。

 会見は佐藤が欠席したものの、男女4人の代表選手が集結。本番への意気込みを語った。

 昨年12月の福岡国際マラソンを日本歴代3位の2時間05分16秒で制した吉田は、「大学を卒業して5年経過するんですけど、何度も世界大会の機会がありましたが、現実を突きつけられる思いをしてきました。率直な気持ちとして、今まで積み重ねてきたものが結果として表れて非常にホッとしています」と日本代表に選出された思いを表現した。

 吉田は直近11年間で8度の総合優勝を誇る箱根駅伝王者・青学大勢として初の世界大会代表となる。大学4年時(第96回/2020年)の箱根駅伝4区で区間新(当時)の快走を演じているが、青学大出身者であることはさほど意識していないという。

「大学を卒業した直後は、青学大出身者として頑張らなければと思ったんですけど、アメリカやケニアで合宿をすると『箱根駅伝』というワードがまったく通用しないんです。むしろ福岡で優勝したことが注目されました。世界と戦う舞台では、出身校はあまり考えないようにしています」

 そして本番での目標として東京五輪で6位に入った“大迫傑超え”を掲げた。

「東京五輪の前に大迫さんと一緒に練習をさせていただきました。指標もなく練習するのは苦しいと思うんですけど、大迫さんの東京五輪へのプロセスを自分は知っています。それを超えられれば自国開催の世界陸上であっても動じることなくレースを進められる。まずは自分自身のやるべきことに集中して大迫さんの順位を超えたいと思います」

 故障なく、継続した練習を積めるのが強みだという吉田。すでに「暑さ対策」に取り組んでおり、持ち味の安定感を発揮して東京の街を力強く駆け抜けてくれるだろう。

 小雪が舞った大阪を初マラソン日本最高&日本歴代5位となる2時間05分39秒で走破した近藤は、「私自身は初の日本代表となりますが、チームとしては3度目の世界陸上になります。私の力だけではどうにもならないと思いますが、チームメイトや多くの方々の声援を背に頑張っていきたいです」と挨拶した。

 近藤は学生時代、全国トップレベルの選手ではなかった。順大で箱根駅伝に“到達”したのは最終学年になってから。しかも10区で区間14位だった。しかし、実業団で急成長。25歳で日本代表に上りつめた。

「順大時代はすごく活躍するような選手じゃなかったんですけど、チームメイトと切磋琢磨してきました。本当に小さな積み重ねを、これまで継続してこられたのが、実を結んだかたちになったと思います」

 自身の強みを、「気象コンディションに左右されないところ」だという近藤。高校時代から暑いレース、強い雨のレース、雪のレースで好結果を残してきた。東京世界陸上は酷暑が予想されるが、「そこに勝機があると思う」と微笑んだ。

「暑さ対策についてはチームメイトの井上(大仁)さん、山下(一貴)さんが、世界陸上を経験しています。井上さんは酷暑のジャカルタ・アジア大会で金メダルを取った実績もあるので、先輩方から暑さに対する術を学びたい。私の最大の目標はロス五輪なので、まずは東京世界陸上でどこまで戦えるのか。伸び伸びと自分の力を出し切って、上位入賞を目指して頑張ります」