2025年3月9日、名古屋ウィメンズマラソン、佐藤早也伽が日本人1位に 写真/森田直樹/アフロスポーツ

(スポーツライター:酒井 政人)

過去の自分を超えたい

 10000m日本記録保持者の新谷仁美(積水化学)は欠場したが、東京世界陸上の代表選考会を兼ねた名古屋ウィメンズマラソン2025は熱い戦いになった。そのなかでヒロインとなったのが新谷と同じ積水化学に所属する佐藤早也伽だ。

 新谷とともにクイーンズ駅伝(全日本実業団女子駅伝)で2度の日本一を経験している佐藤。「駅伝はガムシャラに走っているイメージですが、今日のマラソンはペースを押していくイメージで走りました」と駅伝とマラソンで“キャラ”を使い分けた。そして過去のマラソンでは見せることができなかった“粘り強さ”を発揮する。

 2時間20分前後ペースで進む予定だったトップ集団は風の影響もあり、前半は思うようにペースが上がらない。10kmは33分28秒、中間点は1時間10分37秒の通過になった。トップ集団に挑んだ日本人選手は5人いたが、16km付近で五島莉乃(資生堂)、25km過ぎに大森菜月(ダイハツ)、27km付近で上杉真穂(東京メトロ)が遅れだした。

 トップ集団は30kmを1時間40分20秒で通過。2時間17分29秒を持つシェイラ・チェプキルイ(ケニア)がペースアップして、33km付近で加世田梨花(ダイハツ)が一気に引き離される。佐藤もついていけなかったが、終盤の走りが素晴らしかった。

「できるだけ前の選手に離されないようについていきました」と36.5km付近で前回2位のユニスチェビチー・チュンバ(バーレーン)に追いつくと、38.2kmで引き離す。雲ひとつない青空の下、サングラス姿の佐藤が最後まで華麗に駆け抜けた。

 そして優勝したチェプキルイと19秒差の2位でゴールに飛び込んだ。佐藤は40kmまでの5kmを16分41秒でカバー。前半のハーフより後半のハーフの方が15秒も速いネガティブスプリットで、日本歴代9位の2時間20分59秒を叩き出した。

「自己ベスト(2時間21分13秒)を更新したい気持ちがあったので最後まで頑張れたと思います。これまでは30km以降、脚が重くて前に進まなかったんですけど、今日は脚が残っていて、余裕があると感じていました。これまではペース変化に焦ってしまうこともあったんですが、今日はあまり気にせず、集中して走れた。これらが成長した部分ですし、過去の自分を超えられたかなと思います」