
(スポーツライター:酒井 政人)
廣中が“絶妙スパート”で2年ぶりの優勝
日本選手権10000mの女子は“九州勢”の熱い戦いになった。長崎出身の廣中璃梨佳(JP日本郵政グループ)と熊本出身の矢田みくに(エディオン)だ。矢田の方が1学年上で、高校時代(※2017年のインターハイ3000mは廣中が7位、矢田が8位)から競い合ってきた。
20時15分にスタートしたレース。緑のウェーブライトは31分20秒ペースに設定された。外国人選手の後ろに廣中がつくと、矢田がピタリとマークする。先頭集団は3000mを9分23秒で通過して、4000m手前で前年3位の兼友良夏(三井住友海上)が脱落。雨のなか、5000mは設定通りの15分40秒で通過した。
8000mでペースメーカーが離脱すると、廣中、矢田の順で駆け抜ける。ふたりのマッチレースが始まった。
徐々にペースを上げた廣中が、残り4周を前にペースを落とす。矢田に先頭を譲るかたちになったが、これは“戦略”だった。
「残り5周でいきたかったんですけど、押し切れなかった。一旦、後ろに下がって、自分を落ち着かせる時間にしたいなと思いました。ラストスパートをどこでかけるのか。レースプランを練り直したんです」
ふたりは9000mを28分16秒で通過。矢田の様子を探りながらレースを進めた廣中がラスト2周で前に出る。残り600m付近で矢田を突き放すと、ラスト1周でさらにペースアップした。緑に灯るウェーブライトの前を突っ走り、2年ぶりの優勝ゴールに飛び込んだ。
廣中はラスト1周を64秒でカバーして、31分13秒78をマーク。2位は矢田で31分20秒09、3位は兼友で32分18秒25だった。なお東京世界陸上マラソン代表の小林香菜(大塚製薬)はスピード強化の目的で出場して、33分41秒65の10位に入った。