
(スポーツライター:酒井 政人)
大学勢との“ガチンコ対決”に応えたトヨタ自動車
実業団vs.大学、駅伝では混じることがほとんどなかった両者が“日本一”をかけて激突した。3月16日に行われた「大阪・関西万博開催記念 ACN EXPO EKIDEN 2025」(以下、エキスポ駅伝)だ。
大会前、青学大・原晋監督が「こんなに目立つ大会になぜ出ないのか?」とか、「実業団は外国人選手を使わないくらいの気構えでやってほしい」と実業団チームを煽るような発言をしていたが、勝負は大学勢との“ガチンコ対決”に応えたトヨタ自動車が完勝した。
1区(8.9km)は「どんな秒差でもトップでタスキを渡そうと考えていた」という吉居大和が残り300m付近から強烈スパートを放ち、駒大・伊藤蒼唯を突き放す。「得意なラストでしっかり決めることができたので良かったと思います」と伊藤に4秒差、青学大・鶴川正也に12秒差をつけて、真っ先に中継所に駆け込んだ。
2区(5.1km)の野村優作は2.2km付近で駒大・吉本真啓にトップを奪われるも、冷静だった。「あまり状態が上がっていないと感じていたので、序盤は落ち着いて入って、後半の下りから上げていこうと考えていました」と狙い通りの“後半勝負”を展開。3.5kmで駒大を抜き返して、2位に浮上した青学大と12秒差で絶対エースにタスキを託した。
最長区間の3区(12.5km)はハーフマラソン日本記録保持者の太田智樹。最初の1kmを2分35秒で入ると、グングンとリードを広げていく。
「どんな順位でもらっても、自分の走りをすればしっかり結果が出ると思っていたので、楽しんで走ることができました。新御堂筋をまっすぐ走るコースは人が入れないエリアがあったので、孤独を感じることもあったんですけど、ビルの上や駅のホームなどからたくさんの方が応援してくれてうれしかったですね。(急勾配の)坂が見えたときは絶望したというか、どうしようかなと思ったんですけど、自分のペースで走った結果、区間賞を獲得できて良かっです」
パリ五輪10000m代表の太田は区間2位の國學院大・上原琉翔に47秒差をつけるダントツの区間賞。リードを1分11秒まで拡大した。
4区(5.4km)のサムエル・キバティは思うようにペースが上がらなかったが、「コンディションは悪かった。でもベストを尽くしました」とトップを駆け抜けた。
後半のロング区間となる5区(10.1km)は2月9日の延岡西日本マラソンを2時間09分43秒で制した湯浅仁が担当。「最初の5kmくらいは良かったんですけど、折り返してからは向かい風がきつく感じました。順位をキープすることしかできず、チームに貢献できなかったのが悔しいです」と本人は話したが、マラソンの疲労が残るなか、区間4位でカバーして独走状態を崩すことはなかった。
最短区間の6区(4.7km)は今大会最年長となる34歳の田中秀幸が存在感を発揮する。「自分のなかで最大、最善の準備をしてきて、いまの状態ではしっかりと出し切れたのかなと思います」と帝京大・楠岡由浩を2秒差で退け、区間賞を獲得した。
6区を終了して後続とは1分以上の大差。最終7区(7.8km)の内田隼人は、「焦らずに、1着でゴールすることだけを考えて走りました」と後ろを気にすることなく、雨の大阪を突き進む。そして大阪・関西万博会場前のゴールに飛び込んだ。「最初で最後になるかもしれない大会ということで、ゴールテープを切った瞬間は凄くうれしく思いました」と笑顔が弾けた。