勝って当然の重圧を跳ね返した

 トヨタ自動車は7区間中4区間で区間賞を獲得。2区の途中で首位を譲ったものの、すべての中継所をトップで通過して、後続に1分14秒以上の大差をつけて完勝した。10000m日本記録保持者の塩尻和也が5区で区間賞を獲得して、マラソン日本記録保持者の鈴木健吾がアンカーを務めた富士通が2位。実業団と大学、カテゴリーを超えた対決は、実業団勢がワン・ツーを飾ったかたちになった。

“日本一”に輝いたトヨタ自動車の熊本剛監督は、「大阪のど真ん中を走らせていただいたこと、非常に多くの方が沿道で応援してくださったことに感謝したいと思います。実業団として、(大学には)負けられないというプレッシャーがあったなかで、選手たちは優勝を目指してしっかりとタスキをつなぎ、勝ち切ったことは評価できると思います」と7人の走者を称えた。

 選手たちも重圧を感じていたようで、大会MVPに輝いた太田は、「負けたら『何をしているんだ』と言われてしまうので、そういう意味でやりづらさは感じましたね。勝ててホッとしている部分があります」と明かした。

 終わってみれば、学生に圧勝したトヨタ自動車。しかし、決して楽な試合ではなかったようだ。

 大阪マラソンと東京マラソンに出場した7名はレースのダメージを考慮して起用を見送り、田澤廉と鈴木芽吹は米国・アルバカーキの合宿中。加えて、故障でレースに出られない選手もいたため、「このメンバーしかいなかった」と人数的にもギリギリだったのだ。

「我々は実業団として、時間とお金を会社からいただきながら活動している。プロ意識を持ってほしい、と選手に言っていますし、学生とは立場が違いますので、その意地を出せたかなと思います」(熊本監督)

 大学勢は3年生以下が主体のチームが多かったなかで、ニューイヤー駅伝3位のメンバーを7人中5人起用するなど、現状での“ベストオーダー”を組んできたトヨタ自動車。実業団選手の矜持をエネルギーにして大阪の街を力強く駆け抜けた。