巨人のスター選手たち。左から長嶋茂雄、金田正一、王貞治選手=1969年11月(写真:共同通信社)
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 ここまで触れてきたように、1973年で「巨人V9」が終わっても、巨人は12球団の中では圧倒的な存在感があった。テレビの「巨人戦」は、テレビ局にとって高い視聴率が見込める“ドル箱”コンテンツだったからだ。テレビの放映権料は、巨人の主催試合は巨人に、セの他の5球団主催の巨人戦は5球団に入り、球団経営の根幹となったのだ。

 1965年のドラフト施行以後、戦力の均衡化が進み、巨人は一時期衰えたが、1992年にドラフト制度に「逆指名制」が導入され、93年に「FA制度」が導入されるとともに、再び巨人に有力な選手が多数入団するようになった。これによって巨人はV9(1965年から73年、セ・リーグ、日本シリーズ9連覇)の主力だった長嶋茂雄、王貞治、堀内恒夫らが引退しても、セの最強チームであり続けた。

1979年5月9日の中日戦、すでに現役末期にさしかかっていた王貞治だったが、この試合では3打席連続ホームランを放つなど、最後まで打棒は冴えわたっていた。右は張本勲(写真:共同通信社)
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10年単位でセ各球団ごとの勝率と優勝回数を見てみると…

 しかし、セ・リーグ全体を見渡せば、静かに「地殻変動」は確実に進んでいた。

 1960年代から90年代まで10年単位でのセ・リーグ6球団の成績を見てみよう。「位」は平均順位。「優」はリーグ優勝の回数。

【1960年代】
巨人:1.6位772勝539敗35分 率.589/優7
阪神:2.5位693勝619敗35分 率.528/優2
中日:3.4位676勝639敗28分 率.514/優0
大洋:3.7位629勝678敗35分 率.481/優1
広島:4.8位585勝720敗47分 率.448/優0
国鉄:4.9位574勝734敗40分 率.439/優0

【1970年代】
巨人:2.1位686勝539敗75分 率.560/優6
中日:3.1位620勝607敗73分 率.505/優1
阪神:3.4位623勝595敗82分 率.511/優0
広島:3.9位601勝607敗92分 率.497/優2
ヤクルト:4.1位554勝664敗82分 率.455/優1
大洋:4.4位572勝644敗84分 率.470/優0

【1980年代】
巨人:1.9位703勝516敗81分 率.577/優4
広島:2.1位683勝527敗90分 率.564/優3
中日:3.5位619勝590敗91分 率.512/優2
阪神:4.0位581勝657敗62分 率.469/優1
大洋:4.7位536勝690敗74分 率.437/優0
ヤクルト:4.8位539勝681敗80分 率.442/優0

【1990年代】
巨人:2.4位715勝600敗2分 率.544/優3
ヤクルト:2.8位694勝621敗7分 率.528/優4
中日:3.2位672勝643敗6分 率.511/優1
広島:3.4位653勝662敗6分 率.497/優1
横浜大洋:3.9位650勝665敗6分 率.494/優1
阪神:5.1位561勝754敗5分 率.427/優0

 この40年間、巨人は勝率ではずっと1位であり続けたが、リーグ優勝の回数は60年代は7回、70年代は6回だったのが、80年代は4回となり、90年代は3回と、4回のヤクルトに抜かれてしまっている。