生稲晃子氏(左)と今井絵理子氏(右)は石破内閣でともに政務官に就任した=2022年8月撮影(写真:Motoo Naka/アフロ)

いずれもタレント出身の自民党参院議員である今井絵理子氏と生稲晃子氏が、第2次石破内閣の政務官に起用されたことをめぐって、「“元”とはいえ、タレント議員に政府の要職が務まるのか」といった疑問が湧き上がりました。政治家になってからの実績にも不安があり、政務官にふさわしくないというのです。一方では、役職をしっかり務めてほしいというエールも少なくありません。では、「政務官」とはどんな役職で、どのような経緯を持っているのでしょうか。やさしく解説します。

フロントラインプレス

「政治主導」の切り札だったが…

「政務官」制度が導入されたのは、2001年のことです。中央省庁を統廃合する省庁再編に時期を合わせて導入されました。その際のキーワードは「政治主導の実現」です。日本の国家運営は「官主導」という根本的な欠陥があり、民意を正しく政策に生かすためには選挙で選ばれた政治家が主導する体制に改めなければならないとされたのです。

 とくにポイントとなったのは、国会での政府答弁です。官僚に答弁させる仕組みを排除し、政治家が野党議員の質問に答える形とし、国会の議論を活発にすることも狙いました。そして、省庁再編を機に行政を預かる政治家のポストを増やし、政治主導を実現させる仕組みを整えたのです。

 どこが変わったのでしょうか。

図:フロントラインプレス作成

 従来は大臣を支える「次官」として、官僚側のトップである事務次官、および政治側の政務次官という2ポストが用意されていました。しかし、内閣府設置法や国家行政組織法などの改正、国会活性化法の制定などによって、これらの次官制度は廃止され、代わりに政治任用のポストとして「副大臣」「政務官」が新設されることになりました。

 副大臣の職務は「大臣の命を受け、政策及び企画をつかさどり、政務を処理し、並びにあらかじめその省の長である大臣の命を受けて大臣不在の場合その職務を代行する」(国家行政組織法第16条3)ことです。

 一方、政務官は正式名称を「大臣政務官」といい、その任免は大臣の申出により、内閣が行うことになっています。その役割は「大臣を助け、特定の政策及び企画に参画し、政務を処理する」(同法第17条3)こと。副大臣がいざというときは大臣の職務を代行する地位にいるのに対し、政務官は明らかに格下で、あくまで補佐的に大臣につかえることになっています。簡単に言えば、大臣、副大臣に次いでナンバー3という位置づけです。

 政務官は政府の一員として国会答弁に立つ重要な役割を担っていますが、そのポジションについて、永田町ではしばしば「若手議員の登竜門」「机上の空論ではない政策を学ぶ第一歩」などの言い方がされてきました。実際、衆院出身の場合は当選2〜3回目、参院の場合は当選1回の議員がその職に就くことが多いようです。

 今回批判を浴びた今井絵理子氏は参院2期目、生稲晃子氏は同じく参院の1期生。過去のケースに照らすと、さほど意外感はありません。それなのに、なぜ批判を浴びたのでしょうか。