(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)
米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手が2年連続3度目となるリーグMVPに輝いた。過去2度はエンゼルス時代のア・リーグで、今回はナ・リーグでの獲得。両リーグでの受賞は史上2人目で、指名打者(DH)専任の選手が獲得するのはメジャー史上初の快挙だった。
これまで守備につかないDHの評価が高まらない風潮があった。それでも大谷選手は、史上初の「50―50」(シーズン50本塁打、50盗塁)を達成して本塁打と打点の二冠を獲得するなど、圧倒的な打撃成績で新たな扉をこじ開けた。
ナ・リーグがDH制を導入したのは2022年からで、快挙の裏側には変化を恐れないメジャーの姿勢がある。国内外のプロ野球に目を向けると、主要なリーグでDHがないのは日本のセ・リーグのみ。セでのDH導入に前向きな意見が日本球界からも出ている中、大谷選手の“MVP効果”を議論の起点にするのは悪い話ではない。
3度目の満票MVP
「初めてこのリーグに来て、他のチームも自分のチームも素晴らしい選手がいる中でこれだけ評価してもらえたのはうれしいですし、今後の励みになる。来年以降頑張りたいという気持ちにさせてくれました」
報道によれば、大谷選手は受賞後の電話会見で、2年続けて満票を獲得してMVPに選ばれた心境をこう語った。
今季の大谷選手は、2023年9月にキャリア2度目となる右肘を手術した影響から「投手・大谷」を封印。DHで打者に専任し、54本塁打、130打点、打率3割1分、59盗塁の好成績をマークした。
MVPは、全米野球記者協会(BBWAA)に所属する30人の記者による実名投票で決まる。近年の選考では、打撃、守備、走塁、投球を総合的に評価した勝利貢献度の指標「WAR」が重視される傾向にある。
投手と打者の比較も可能とされる半面、打者で守備につかないDHには守備の貢献度が反映されない。ところが、大谷選手の数字は際立っていた。
時事通信が報じたデータサイト「ファングラフス」の計算によれば、大谷選手のWARはリーグトップで驚異の9.1。他の候補で遊撃手として評価の高いメッツのフランシスコ・リンドーア選手の7.8などを大きく上回った。
「本来はピッチングもして、オフェンス面も出続けてというのがやりたいこと。自分に課せられている仕事だと思っているんですけど、(今季は)それができないと決まっていた。オフェンス面でそれを補えるくらい、1年目ということもあったのでしっかり活躍したいと思っていた。こういう形でみなさんに評価してもらえて光栄、すごくうれしい気持ちでいます」(大谷選手)