日本からトップ選手が続々海を越える
大谷選手、山本投手、佐々木投手が在籍する環境や、豊富な資金力、メジャーでも定評がある育成システム、温暖な気候や日本に近い地理的条件などを後ろ盾に、今後も日本のトップ選手の有力な受け皿となる好循環を生み出す土壌が整ったといえる。
気になるのは、日本球界との日本国内における“すみ分け”だろう。いまや、ドジャースは日本においては全国区の人気チームとして存在感を高め、日本のトップ選手を戦力補強の有力な供給源としている。
そればかりか、ビジネス面でもスポンサー企業などで競合するようになった。従来から、日本のトップ選手がメジャーへ流出する事態は、「日本球界のマイナーリーグ化」だと比喩される要因となっていた。それが、大谷選手獲得で始まったドジャースの“日本のフランチャイズ化”で、日本球界そのものがドジャース傘下のピラミッドに組み込まれているようにも映る。
日本のプロ野球界は、ドジャースの「マイナーリーグ」、日本流に言えば「2軍」に成り下がってしまうのか。この流れを止めることは容易ではなさそうだ。
田中 充(たなか・みつる) 尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授
1978年京都府生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。産経新聞社を経て現職。専門はスポーツメディア論。プロ野球や米大リーグ、フィギュアスケートなどを取材し、子どもたちのスポーツ環境に関する報道もライフワーク。著書に「羽生結弦の肖像」(山と渓谷社)、共著に「スポーツをしない子どもたち」(扶桑社新書)など。