ドジャースが日本を「フランチャイズ」に?
ドジャースが、佐々木投手を獲得できた背景には、大谷選手、山本投手の存在も影響しているだろう。大谷選手は10年、山本投手は12年の長期契約を結んでおり、他にも日本人トレーナーもいる。日本選手3人が同時に所属するのは、2014年のヤンキース(イチロー選手、黒田博樹投手、田中将大投手)以来と心強い存在となりそうだ。

ドジャースの視点からは、3選手の補強は偶然の戦力強化ではなく、日本を「選手獲得」と「ビジネス市場」の両輪から攻勢を加速させていることを浮き彫りにした。
選手強化においては、西海岸という“地の利”を最大限に生かしている。温暖な気候に加え、日本から近く、親しみがある点も大きい。メジャーの各球団は、本拠地を置き、試合の興行権を独占的に持つ都市を「フランチャイズ(保護地域)」と呼ぶ。ドジャースは日本を「フランチャイズ」であるかのように位置付けているように映る。
ドジャースは大都市のロサンゼルスに本拠地を置くが、日本とは太平洋を隔てただけで、東海岸のニューヨークなどと比べれば地理的にも近いイメージが強い。同じく西海岸に位置し、日本選手が多く在籍するマリナーズやパドレスなどと並んで物理的な距離の近さに加え、大谷選手を獲得したことの波及効果が大きい。
山本投手や佐々木投手がその後に加入した構図は、心理的にも日本の野球ファンとの距離を一層縮めた。大谷選手加入後のドジャース戦は、日本のスポーツニュースでも大きく扱われ、フォーブスジャパンの記事では、調査会社が露出効果を期待する日系企業12社が24年にドジャースとスポンサー契約を結び、100億円超の大谷選手の年俸に匹敵する収入を得たことを紹介する。
昨季のワールドシリーズは日本時間の午前中に地上波でライブ中継されただけでなく、日程が重なっている日本シリーズが放映されている夜にも急きょ、フジテレビがダイジェスト放送をした。これに対し、日本野球機構(NPB)がフジテレビの日本シリーズの取材パスを没収する騒ぎとなった。
ドジャースは25年シーズンの開幕戦を、同じく日本から移籍した鈴木誠也選手、今永昇太投手が所属するカブスと東京ドームで行うことが決まっており、早くも注目度が高まっている。MLB関連でも、ドジャース関連グッズは日本国内でも各地で販売され、完全に日本をフランチャイズのように“商圏”へと取り込んだといえる。