(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)
プロ野球・ロッテからポスティングシステムで米大リーグ挑戦を表明した佐々木朗希投手とメジャー球団との交渉が佳境を迎えていると報じられている。米メディアなどによれば、大本命とされたドジャースや対抗のパドレス、ほかにヤンキースやカブスなど8球団ほどに絞られたようだ。交渉期限は日本時間24日午前7時に設定されている。
こうした中、一部メディアによれば、代理人のジョエル・ウルフ氏が昨年末に応じたオンライン会見で「20球団が興味を持っているが、ロースター(メジャー契約)を確約した球団はない」と語ったという。日本で1年を通じて先発ローテーションで投げた経験がない23歳右腕は、「大器の逸材」としての評価は高い。だが、来季の「即戦力」としてメジャー枠を保証するまでにはいたらないというわけだ。
まだ交渉途中にあるとはいえ、現時点ではどの球団も開幕メジャーの手形を出していないというシビアな評価が露呈した格好だ。
ロースター枠めぐり熾烈な競争
「ロースターを確約したチームはない」
ベースボール専門メディア「Full-Count」は、佐々木投手の代理人を務めるウルフ氏が日本時間の24年大晦日のオンライン会見でこう明言したと報じた。
メジャーのロースターは、メジャー球団の支配下登録選手40人枠のことで、いわゆるメジャー契約を結んでいる選手が該当する。この中から、実際にメジャーの試合に出場できるベンチ入りメンバー(アクティブ・ロースター)26人が選ばれる。
佐々木投手の場合、25歳未満かプロ6年未満の海外選手は契約時にマイナー契約しか結べない「25歳ルール」の対象となっているが、メジャーのスプリングキャンプに招待選手として参加し、結果を残すことでメジャー契約に切り替えることは可能だ。大谷翔平選手(ドジャース)のエンゼルス時代のメジャー1年目は、このケースで開幕戦からメジャーの試合に出場している。
ウルフ氏も会見の中で「彼はマイナー契約を結ぶから、スプリングトレーニングで(40人枠の)チームに選出されることを願うだけだ。彼にロースター枠を確約したチームはない。なので、私たちは彼が春にいい活躍をすることを願うしかできることはない」(24年12月31日付・Full-Count)と語ったという。
実際のところ、ロースターは春季キャンプ前の時点で、ほとんどの球団の枠が埋まっている。これは、有力選手の移籍や契約更新のための交渉の際にロースターの確約が条件となるからだ。
日本からFAやポスティングシステムで移籍するトップ選手も確約の対象となる。ドジャースは1月、韓国プロ野球からポスティングシステムで移籍する金慧成(キム・ヘソン)内野手を3年総額1250万ドル(約19億6000万円)で獲得した際、40人枠を空けるために若手捕手を戦力外(その後にトレード)とした。
どの球団もメジャー枠には余裕がなく、マイナー契約の選手が春季キャンプやオープン戦で結果を残して開幕時にメジャー契約を勝ち取るには、投手と野手を合わせても残りわずかしかない枠をかけた熾烈な争いに勝ち残らなければならない。