球団側はしたたかに佐々木投手と他投手を天秤に

 サンケイスポーツの元日付記事によれば、ウルフ氏は、20球団が提出したプレゼンテーション資料などから、佐々木投手が会いたい球団を選んで面談したことを明かし、中でも投手育成のプランなどに関心を寄せていたという。報道では、ドジャース、パドレス、カブス、ヤンキース、メッツなどが面談したと伝えられている。

 一方、メジャー側も獲得を逃した場合のリスク回避の動きが出ている。

 佐々木投手の有力な移籍先候補の一つであるパドレスは、ドミニカ共和国の17歳の遊撃手を獲得する予定だと報じられた。

 ドラフト外選手の契約金は、各球団に設定されている「国際ボーナスプール」と呼ばれる上限内で収めなければならない。パドレスの残高は、佐々木投手の獲得を争うドジャースを下回ったという。複数選手と獲得交渉に動くのは、メジャー球団としても当然の選択だろう。

 メジャー屈指の代理人であるウルフ氏は百戦錬磨の交渉のプロでもあり、あらゆる状況は織り込み済みか。

 交渉期限まである程度の猶予を残しており、球界関係者も「これからの交渉で、ロースターの確約は重要な材料になるだろう」と話している。最終的な合意時には「ロースター確約」が盛り込まれる可能性も残る。

 タフな交渉の行方はどうなるか。「令和の怪物」のメジャー移籍は刻一刻と近づいている。

田中 充(たなか・みつる) 尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授
1978年京都府生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。産経新聞社を経て現職。専門はスポーツメディア論。プロ野球や米大リーグ、フィギュアスケートなどを取材し、子どもたちのスポーツ環境に関する報道もライフワーク。著書に「羽生結弦の肖像」(山と渓谷社)、共著に「スポーツをしない子どもたち」(扶桑社新書)など。