
まともに歩くこともできず、「神よ、もうできない。怖い、これ以上は無理だ」とただただ、布団に丸まって繰り返す。2025年3月、最後にジェーニャに会ったとき、彼は精神的に極度の衰弱状態にあった。
「歩兵になりたいものなど誰もいない」
ロシアによる侵略戦争が続くウクライナでは、徴兵の問題が度々ニュースとして取り上げられている。激しい戦争が長引き兵員の確保は重要な課題だ。
特に深刻な問題となっているのが、歩兵の不足だ。激しい戦闘が長期化するにしたがって、前線で中心的役割を担うことが多い歩兵の消耗は特に激しい。「前線で戦う」ことを余儀なくされる歩兵は、命の危険が極めて高いことを意味する。
このため、志願して軍に行く人の中でさえ、歩兵になりたがる者は少ない。「歩兵になりたいものなど誰もいない」。これは取材中に何度も聞いた言葉だった。
この戦争では、小型-中型のドローンの役割が急速に発達した。ドローンは歩兵の役割の一部を大きく担う一方で、「人間」がやらなければならない任務は多い。
むしろ、ドローンにできないことを務める人の重要性は増しているかもしれない。
筆者は歩兵の一人ジェーニャに取材を重ねた。