
ハンガリーで急速に支持を集めている若き政治家が欧州で注目を集めている。マジャル・ペーテル氏(44)だ。同氏が率いる野党ティサの支持率は、オルバン首相率いる与党フィディス・ハンガリー市民連盟を上回っており、「選挙で選ばれた独裁政治」とも言われるオルバン政権を打倒するのではとの見方も広がっている。マジャル氏とはどんな人物か。
(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)
「われらの時は来た!」「祖国を欺くものは、歴史のゴミと化すべきだ!」
ハンガリーの首都ブダペストで15日、演説に集まった数万の聴衆を煽ったのは、野党「ティサ」の若き党首、マジャル・ペーテル氏(44)だ。海外にも生配信されたドローン映像からは、マジャル氏の話を聞こうという人々が大通りを埋め尽くした様子が確認できる。マジャル氏は15万〜20万人が集会に参加したとし、欧米などのメディアは5万人程度としている。
マジャル氏の演説が始まった現地時間午後4時ごろの気温は8度ほど。時折雨が降る中で、人々は45分あまりマジャル氏の言葉に聞き入った。
マジャル氏が糾弾した「祖国を欺くもの」とは、現政権を率いるオルバン首相を指している。マジャル氏はこれまでも、オルバン政権の汚職疑惑などを追及してきた。
マジャル氏は、オルバン「王朝」が納税者から奪ってきた富は今や10兆フォリント(約4兆円)に上り、今こそ団結してオルバン氏という冬の時代を終わらせ、ハンガリーに春を呼ぶ時が来たと宣言した。
3月15日は、1848年にオーストリア帝国から独立を試みたハンガリーの革命記念日にあたる。オルバン首相も同日午前、国立博物館前で演説し多数の支持者を集めた。
オルバン氏はこの場で、外国から資金提供を受けている市民団体やメディアを「虫けら」と揶揄(やゆ)。復活祭の頃にはこれらの虫を一掃すると豪語した。
マジャル氏を名指しこそしなかったものの、「汚い金」で雇われた野党政治家など「影の軍隊」を全て排除するとも述べている。現在欧州議会議員であるマジャル氏が、欧州連合(EU)の傀儡(かいらい)であると、暗に中傷した。
両党首が激しく言葉の応酬を繰り広げる背景には、この1年余りのティサの目覚ましい躍進がある。昨年マジャル氏が党首としてティサを率い始めて以来、同党の支持率は急上昇してきた。15年もの間、ハンガリーを制してきたオルバン氏の強権政治を倒す可能性がある勢力として注目されている。