
米トランプ政権は3月15日、政府系メディア「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」の記者ら職員1300人に休職を命じた。VOAは政府機関の米グローバルメディア局(USAGM)傘下にある。同じくUSAGMの管轄下で、自由な報道が制限されている権威主義的な国々で活動するラジオ・フリー・ヨーロッパやラジオ・フリー・アジアの活動も停止された。
ホワイトハウスは、この措置により米国の納税者が「過激なプロパガンダ」の犠牲にならなくなるとの声明を発表。だが、これはトランプ氏による自らに批判的なメディアに対する封じ込めと見ることもできる。今回の措置より数週間前に、SNSの投稿をめぐって停職処分を受けたVOAのベテラン記者、スティーブ・ハーマン氏に日本のメディアとして初めて取材した。
(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)
米国のメディアは、古くはウォーターゲート事件の真相究明など優れた報道で世界のジャーナリズムを牽引してきた。だが、トランプ政権の発足以来、状況が激変している。
今年2月、VOAのトップ記者の一人が、SNSへの投稿が「反逆的」だとトランプ政権から糾弾され、休職に追い込まれた。記者の名は、スティーブ・ハーマン国内担当首席特派員。20年近くVOAに在籍、ホワイトハウス支局長などを歴任し、東京で日本外国特派員協会(FCCJ)の会長を務めたこともある。
2011年に東日本大震災が起きた際には福島県に入り、現地の状況を世界に詳報した数少ない外国特派員の一人でもある。日本をはじめとしたアジア各地でも長く報道に携わってきたベテラン記者だ。
筆者は東京の海外メディアで報道業務に携わり始めた頃から、ハーマン氏とは旧知の仲だ。ただし、今回のインタビューはハーマン氏から依頼されたものではなく、あくまで一人の取材者として筆者から申し込んだものだ。
米国のジャーナリズムの現場で何が起きているか、そして、当事者はどのような思いで使命を果たそうとしているのか、同氏の肉声をお伝えしたい。