ジャーナリズムをどう守るか
──最近、USAIDの解体に関連した記事で、隣国タイに亡命しながらも活動するミャンマーの独立系メディアについて言及しました。どうすれば、かき消されそうな彼らの声を届け続けることができるのでしょうか?
ハーマン氏:USAID の資金が回復されなければ、明らかに別の資金源が必要です。先ほど、米政府が資金提供をやめた場合、ラジオ・フリー・ヨーロッパを継続させる方法をチェコ政府が検討しているというニュースを知りました。残念ながら、他の団体がその役割を引き受けなければなりません。
──日本政府にも、その役割を果たすことはできるのでしょうか。
ハーマン氏:それは世界中のすべての主要な民主主義政府が検討すべきことだと思います。NHK の対外放送は控えめですが、NHKワールドのほか韓国やその他の国でもそうした例がいくつかあります。
今後検討すべきことの1つは、政府の規制や資金不足などの理由で情報の自由な流れが難しい地域の人々のために、どれだけ多くの国が貢献や支援をできるかどうかだと思います。ジャーナリズムの質は、ジャーナリストを適切に訓練し、優秀なジャーナリストを採用すること、そして高い基準を保持する編集者を抱え、その使命を信じ、継続することにコミットする経営陣やオーナーシップを持つことから生まれます。
──日本のジャーナリストに伝えたいことはありますか?
ハーマン氏:何が起こっているのかを伝える、それが最善策です。私は日本のジャーナリズムを数十年観察してきました。私が日本にいた頃は、独特のシステム、いわゆる記者クラブなどによってコントロールされていました。近年いくらか自由化され、それは本当に素晴らしいことです。私が気づいたことの1つは、日本のジャーナリズムは正確性と公平性に関してかなり高い基準を持っており、それをきちんと担保するために大金を費やすことをいとわないということです。
──あなたは、ジャーナリズムを死なせたりはしませんね?
ハーマン氏:私が目を光らせている間は、させません。
■インタビューを終えて
米国では今、言葉を奪われそうになりながらも必死に報道の意義を信じ、自由な報道を守ろうと戦うジャーナリストが多数いる。まだ自由に言葉を発することのできる場に身を置く取材者は、彼らから託されたバトンと言葉を受け継ぎ、広げ続ける責務があるのではないだろうか。
楠 佳那子(くすのき・かなこ)
フリー・テレビディレクター。東京出身、旧西ベルリン育ち。いまだに東西国境検問所「チェックポイント・チャーリー」での車両検査の記憶が残る。国際基督教大学在学中より米CNN東京支局でのインターンを経て、テレビ制作の現場に携わる。国際映像通信社・英WTN、米ABCニュース東京支局員、英国放送協会・BBC東京支局プロデューサーなどを経て、英シェフィールド大学・大学院新聞ジャーナリズム学科修了後の2006年からテレビ東京・ロンドン支局ディレクター兼レポーターとして、主に「ワールドビジネスサテライト」の企画を欧州地域などで担当。2013年からフリーに。