東日本大震災で福島に入った数少ない外国人特派員
──不適切な言い方かもしれませんが、例えば独裁的な政権などにおいて、ジャーナリストが政権の意向により停職に追い込まれるような状況は、ある意味、報道に携わる者にとって「勲章」とも言えないでしょうか。つまり、それだけ自身が正しく仕事してきた証であり、だからこそ政権側から恐れられているのだと。
ハーマン氏:わかりません。他人の心を読むことはできません。あるいは、これが法的手続きに進み、私たちが証拠開示手続きに入るまで、つまり、裁判所が内部のコミュニケーションをすべて開示するよう要求できる場合を除いて、何が起こっていたのかはわかりません。
もちろん私も同僚たちも、何も間違ったことはしていないと思っています。ただ、この時点でこれを私だけのこととしてフォーカスして欲しくはないのです。
私がVOAを去ったとしてもVOAは継続できますが、全ての職員がVOAで働けなくなり、番組も更新されないことは、VOA全体の存続に関わることで、私の停職よりもはるかに大きな社会問題です。
──最近、VOAへの「鎮魂歌」と題した寄稿をされていますが、これまでVOAが果たしてきた最も重要な功績とは何だとお考えですか?
ハーマン氏:VOAの最も重要な功績は、83年間一貫性があり、信頼され、客観的であり続けたことだと思います。このことは、鉄のカーテンの向こう側、アフリカ大陸、あるいはアジアで何十年にもわたってVOAの放送を聞いてきた人々と話して、彼らがどれほどVOAを大切に思い、人生において大きな役割を果たしてきたかを知れば分かります。
私たちが、自分たちの仕事をあまりにしっかりとやってきたがために、強制的に閉鎖に追い込まれるような状況には陥りたくありません。
──これまでVOAが伝えてきた「声なき声」には、どんな事例がありますか。
ハーマン氏:声を上げるのがとても危険な独裁政権下で暮らしている、または暮らしていた人々についてだけではありません。現在、VOAは約50の言語で放送されています。
声なき声を届けることとは、世界の最も訪れるのが困難な場所や、世界で最も過酷な場所に直接出向いて話をすること。そして、内乱や戦争、自然災害の最前線を訪れ、人々と直接話をして、映像や音声、テキストを通じて正確な状況を伝えることを意味します。
私は2013年にフィリピンを直撃した台風ハイエン(6000人を超える死者を出した台風)について取材しました。(東日本大震災の時)福島では長い時間を過ごしました。人々が福島から避難していたとき、私は福島に入ろうとする「狂人」でした。