「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」発言で2025年の新語・流行語大賞を取った高市首相(写真:アフロ)
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約40年ぶりの抜本的な見直しとなるはずだった労働基準法の改正が、当初目標の2026年から先送りされる見通しとなりました。厚生労働省での議論は「14日以上の連続勤務禁止」など労働者の負荷を減らすことなどを軸に進んでいましたが、2025年10月に就任した高市早苗首相がこれまでの方向性とは逆に「労働時間規制の緩和」を検討するように指示したためです。“労働者の憲法”とも呼ばれる労働基準法の改正をめぐって何が起きているのでしょうか。やさしく解説します。

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「労働者の憲法」労働基準法とは

 敗戦直後の1947年に施行された労働基準法は、日本国憲法の第25条(生存権)、第28条(労働3権の保障)などを具体化した法律です。閉鎖的・封建的で劣悪だった戦前の労働環境や労使関係を一掃し、国際労働機関(ILO)などが定める国際的な労働条件を参考にして連合国軍総司令部(GHQ)のリードで制定されました。

 労働者の基本的な権利や労働条件などについて、その基本原則を定めており、まさに“労働者の憲法”と呼ぶにふさわしい法律です。

 労働基準法が定める内容はさまざまです。

 最も重要なのは、賃金支払いの原則や最低賃金・割増賃金(残業・休日・深夜労働)など賃金に関する規定、そして、「原則として1日8時間・週40時間」という法定労働時間や休日(週1日以上または4週4日以上)に関する取り決めなど労働時間と休日に関する規定でしょう。

 解雇する場合のルールや解雇予告手当の支払い義務、産前産後休業、育児・介護休業、労働者の健康・安全確保なども労働基準法に盛り込まれています。労働者と雇用者が交わす「就業規則」の作成と労働条件の明示義務を規定しているのも、この法律です。

 経営側がこの法律の規定に違反して長時間労働や賃金不払い、違法解雇などを行った場合、経営者らは罰金や拘禁刑の刑事罰を科せられることがあります。つまり、立場の弱い労働者の権利を徹底的に守る法律。それが、この労働基準法なのです。

 ただ、産業の変革によって労働環境は時代とともに変化します。人権や労働環境、待遇に関する考え方も不変ではありません。そのため、労働基準法も過去に何度も改正されてきました。なかでも大きかったのは1987年の改正です。このときは「毎日・毎週同じ時間働く」ことを前提としていた労働時間制度を見直し、「1カ月・1年単位での変形労働時間制」「フレックスタイム制」を可能にしました。

 現在の「週40時間労働」を目標として掲げたのも、1987年の改正です。それまでの法定労働時間は、法律が制定されたときと同じ「週48時間」でした。しかし、高度経済成長期、「過労死」に象徴される働き過ぎが大きな社会問題となり、労働時間の抑制は必須の社会課題となったのです。同年の改正では、いきなり週40時間には移行せず、業種ごとに段階的に労働時間を短縮する方法を採用しました。

 このとき以来となる労働基準法の抜本改正が、2024年から厚生労働省の審議会で議論されていたのです。改正の目標は2026年でした。