高市首相、労働時間規制の強化に「待った」

 高市首相は2025年12月25日に開かれた「日本成長戦略会議」第2回会合の席上、同会議の下に「労働市場改革分科会」を設置すると表明しました。この戦略会議は高市政権になって発足した、政策推進の目玉機関。その下に労働市場改革分科会を置くということは、時間外労働の上限規制など現行の労働規制については厚生労働省に任せ切りにせず、首相主導で進めるという“宣言”です。

 高市首相の方針を受け、上野賢一郎・厚生労働相は記者会見で「(2026年1月に始まる)通常国会での(労働基準法改正の)法案提出は今のところ考えていない」と述べ、当初想定のスケジュールが見通せなくなったことを認めました。

 高市首相はもともと内閣の方針として「労働時間規制の緩和検討」を掲げています。厚生労働省の審議会で積み上げてきた「労働時間規制の強化」という労働基準法改正の方向性とは逆の考え方で、経済界が「一律の時間規制は現代の柔軟な働き方に合わない」「裁量労働制の拡大など柔軟性を高めるべきだ」と後押ししています。

 一方、労働側は「長時間労働規制の緩和は過労死防止の流れに逆行する」「健康・安全確保の観点から慎重にすべきだ」と反発しています、

 高市氏は2025年10月、自民党総裁選に勝利した後の両議院議員総会で「私自身もワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てる。働いて、働いて、働いて、働いて、働いていく」と述べました。これは自分自身や自民党国会議員に向けた言葉であり、働く人一般に向けたものではないと説明されましたが、過労死防止団体から激しい反発を招き、労働組合から懸念を表明されたのも事実です。

「ワーク・ライフ・バランスを捨てる」を信条とする高市首相が進める労働時間規制の緩和。それがどんな形になっていくのか、すべての働く人は注目です。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。