高市早苗首相は政権への高い支持率を維持できるか(写真:REX/アフロ)
2025年10月に誕生した高市早苗内閣は、日本維新の会との「閣外連立」を基盤として臨時国会を乗り切り、新年を迎えました。各種世論調査では高い支持率を維持していますが、その勢いを2026年も保つことができるのでしょうか。政治の世界は「一寸先は闇」と言われます。どこかに落とし穴が待っているかもしれません。今年の高市政権の行方をやさしく解説します。
(西村卓也:フリーランス記者、フロントラインプレス)
最大の焦点は「衆院解散・総選挙」
2026年の政治で最大の注目点は「衆院解散・総選挙が実施されるか否か」でしょう。
12月の臨時国会閉幕を受けた記者会見で、高市首相は「目の前でやらなければならないことが山ほど控えているので、解散を考えている暇はない」と述べました。物価高対策などの政策に全力集中する姿勢を強調したのです。
しかし、首相として最強の権限とも言える「解散権」の行使を考えない首相はいません。自らに有利な時期に衆院解散・総選挙を実施して勝利すれば、与党の基盤は強化され、政権の維持に直結するからです。高市首相が政治の師と仰ぐ安倍晋三元首相は、慎重にタイミングを図りながら衆院解散を決断して勝利し、長期政権を築きました。
解散するかどうかを見極める上では、いくつかの判断材料があります。
図表:フロントラインプレス作成
1つは内閣支持率。日本初の女性首相というイメージも好評価につながり、高市内閣は就任以来、歴代内閣の中でもトップクラスの支持率を得ています。内閣支持率は、発足後時間が経つにつれて下落する傾向があるので、高市首相もできれば早期解散したいのが本音のはず。解散のフリーハンドを確保するには、支持率を維持することが重要になります。
何を理由に解散するかという「解散の大義」も重要です。政権が掲げる政策に賛否両論がある場合、「国民に信を問う」として解散を打つケースがあります。 例えば、小泉純一郎元首相が自民党内の反対を押し切って実施した2005年の「郵政解散」、安倍元首相が消費増税先送りの是非を問うた2014年の解散などがそれに当たるでしょう。
一方、2021年の岸田文雄元首相、2024年の石破茂前首相の解散は就任から間を置かずに行われ、「新政権に信任を得たい」との理由でした。高市首相も総選挙を経て就任したわけではなく、政策より新政権への信任を求めて解散する可能性も残っています。
選挙に向けた与野党の準備状況も重要な判断材料です。
選挙区ごとの候補選びには各党とも時間をかけて調整します。首相としては、野党が準備不足の間に与党の体制を整え、野党が思いもよらないタイミングで抜打ち的に解散を宣言するのが理想的な展開です。
では、高市首相はいかなる判断を下すでしょうか。
1月23日召集予定の通常国会は3月までの前半、2026年度予算案の審議が続き、解散する日程の余裕はありません。したがって、解散するとすれば、①3月下旬の予算成立後から4月にかけて、②6月の通常国会会期末に近い時期、③通常国会ではなく秋の臨時国会の冒頭、④臨時国会に補正予算を提出し成立させた後――といったタイミングが考えられます。
一方で、「早期解散せず」という選択肢もあります。政策実現に時間をかけ、その恩恵を国民が実感できるようになった段階で解散・総選挙を実施するケースです。現在のように物価高騰が続き、生活の苦しさを訴える国民の声が充満している状況下では、解散は必ずしも得策ではないからです。
自民党総裁としての高市氏の任期は2027年9月まで。衆院解散を急がず、総裁の任期切れに近いタイミングで解散・総選挙を行い、勝利して総裁再選に弾みをつけるという考え方もあり得ます。
