リベラルな世界秩序の終わりか
──ジャーナリストという仕事に、誇りを持っていますか?
ハーマン氏:もちろんです。私は何千人もの同僚の仕事にも誇りを持っています。私たちにはフルタイムのスタッフだけでなく、契約記者やジャーナリストもいます。これらの契約記者は日曜(3月16日)の夜に、3月31日付で解雇されると通知されました。
──今回の措置は報道の自由、そして米国の民主主義に対する攻撃だと思いますか?
ハーマン氏:判断は他者にゆだねます。私は自分の仕事についてしか話せません。
私たちは間違いなく、非常に歴史的な瞬間の真っ只中にいます。ここ数カ月、私が取材してきた人々は、これが第2次世界大戦後の秩序、いわゆるリベラルな世界秩序の終わりであり、私たちはある種の新しい段階に入っているのではないかと疑問を抱いています。
──最悪の事態としてVOAを解雇された場合、この先どう戦い続けますか?
ハーマン氏:これは突然の出来事で、日々状況は変化していると思います。今後数週間、あるいは数カ月で何が起こるか見てみましょう。
VOA が従来の形で復活し、VOA が何であるか、何でないかを明確に規定した法律である憲章を遵守し続け、(政権との)ファイアウォールが尊重されることを願っています。そのために、私は闘うことができなくなるまで、闘い続けることしかできません。
──昨今、米国でAP通信やMSNBCなどが米政権により名指しで敵視される事態を、英国など世界の報道陣も注視しています。日本を含め世界のジャーナリストは、米国のジャーナリズムを守るために何ができると思いますか。
ハーマン氏:米国や他の国であろうと、政府とメディアの関係の欠陥を明るみにし続け、(政権によるメディアへの)批判を客観的に報道し、それが全く根拠のないものである場合には、積極的に反撃する必要があります。米国も日本も、ジャーナリストが定期的に投獄され、暗殺されるフィリピンやメキシコ、ロシアなどと比べて、非常に幸運(な状況)だと私は思います。
私は(報道を)当然のものとは思っていませんし、最近では多くの人が、民主主義も当たり前のものとは思っていないと感じます。米国の建国の父たちは常に、民主主義を維持するために戦い続ける必要があると語っていました。
民主主義では健全な反対勢力が必要です。異なる視点を聞きたいのです。米国で建国の父たちが確立したのは、行政府、立法府、司法府のバランスが取れ、権力を分け合うというものでした。それは200年以上機能しています。私と私の同僚たちが、従来のジャーナリズムを継続できることをただ願っています。