英プレミアリーグでは障がいのあるサポーターが楽しめる体制を整えてきた。写真はイングランド中部のクラブ、レスターの試合(写真提供:レスター・シティFC)

5月15日、サッカーJリーグが誕生から30周年を迎えた。この間、世の中は大きく変わった。企業の社会的責任が注目され、「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂)」が重要なキーワードになった。

Jリーグもこの潮流に乗ってきた。6つある活動方針の1つに障がいのある人も一緒に楽しめるスポーツのシステムをつくる、としてインクルージョンを念頭においている。スタジアムのアクセシビリティ(使いやすさ)を高め、全てのファンが等しく試合を楽しめるようにする取り組みは今、サッカーの本場欧州でも重視されている。スタジアムにおけるアクセシビリティは、どこまで進化できるのか。英プレミアリーグの事例も踏まえて見ていこう。

(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)

サポーター歴60年、障がいあってもスタジアムに通い続ける

 現在、日本では人口の8%近くが何らかの障がいと共に暮らす。総人口の29.1%を65歳以上が占める超高齢化社会でもある(2022年9月時点、総務省統計局推計)。

 Jリーグがコロナ禍以前の2019年に行った調査では、サポーターの平均年齢は42.8歳だった。前年比で0.9歳上昇した。このまま高齢化が進めば、障がい者に限らず介助が必要なサポーターは確実に増える。サポーターをつなぎ止めるには、使いやすいスタジアムの設計や各種支援の徹底などアクセシビリティの向上が欠かせない。

 参考になるのがプレミアリーグの取り組みだ。筆者はこの取材を通じて、あるプレミアサポーターの存在を知った。イングランド中部のクラブ、レスター・シティFCのサポーターであるマーティン・ボードルさん、66歳だ。

車椅子でスタジアムに通い続けるマーティン・ボードルさん(写真提供:レスター・シティFC)

 6月に誕生日を迎えるボードルさんは7歳からずっとレスターのサポーターだ。12年前、血管系の病気になり、それ以来、車椅子生活を送っている。5年ほど前からは左足に潰瘍ができるようにもなり、しばしば激痛に見舞われるという。

 レスターは規定の車椅子席数の確保など、障がいのあるサポーターに対してきめ細やかな対応をしてきた。ボードルさんが、60年近くスタジアムに通い続けることができているのは、クラブの手厚い支援があってこそだ。