2023年2月17日、Jリーグ開幕戦より 写真/アフロ

(歴史ライター:西股 総生)

川崎フロンターレを地政学で見る

 2月17日に開幕したJリーグは、今年(2023年シーズン)で発足から30周年を迎えている。サッカーに関係するメディアは、例によって各チームの戦力分析や順位予想を展開しているが、そちらは専門家の皆さんにお任せしよう。筆者は、サッカーの専門家ではなく、城や戦国合戦を専門とする歴史家だからだ。

 その筆者が本稿で試みるのは、地政学的観点から考えたJクラブの戦略論である。今回、事例として取り上げるのは川崎フロンターレとサガン鳥栖(とす)だが、この両クラブは、Jリーグ発足以来のいわゆる「オリジナル10」ではない後発組、という点で共通している。

  川崎フロンターレは2017年にリーグ初優勝を遂げて以来、毎年リーグ戦やカップ戦のタイトルを獲得している。昨年(2022)こそタイトルを逃したものの、リーグ戦では最終節まで横浜F.マリノスと優勝争いを繰りひろげた。

川崎フロンターレは2017年以降、毎年のようにタイトルを手にしている

 また、昨年のワールドカップ日本代表にも、三笘・田中・守田・板倉・谷口・山根といった多くの選手を輩出している。現在のJリーグでもっとも成功したクラブの一つ、と評してよいだろう。

 一方、地方都市を本拠地とするサガン鳥栖は、予算規模からするならJ1では下位に属する。財政状況も厳しく、毎年多くの選手を上位クラブに引き抜かれている。にもかかわらず、ユース出身者を中心として手堅いチーム作りを進め、成績はおおむねJ1中位クラスを維持し、しばしば上位進出をうかがう勢いを見せる。現在、J1においてもっとも健闘が光るクラブ、といってよいだろう。

 両クラブを地政学的観点から見てみよう。