2017年7月にトルコ・サムスン市で開催された夏季デフリンピック(写真提供:全日本ろうあ連盟)

デフリンピックをご存知だろうか。聴覚障害者の国際スポーツ大会で「きこえない選手のためのオリンピック」と言われる。第1回大会は1924年にフランスで開催され、約100年続いている。パラリンピックよりも歴史は長く、2022年にブラジルで開かれた前大会で日本選手団は過去最多のメダルを獲得した。

このデフリンピックが2025年に東京で開催される。日本での開催は初めてだ。ただ、東京2020で盛り上がったパラリンピックに比べ、なじみが薄いかもしれない。デフリンピックとはどのような大会なのか。パラリンピックとは何が違うのか。そして東京開催では何を目指すのか。『パラリンピックと日本 知られざる60年史』の著者でジャーナリストの田中圭太郎氏が、全日本ろうあ連盟理事で本部事務所長の倉野直紀氏に聞いた。

(田中 圭太郎:ジャーナリスト)

一部をのぞき、五輪と同じ種目・ルール

 デフリンピックの「デフ(Deaf)」は、英語で「きこえない人」という意味。4年に1度、五輪・パラリンピックの翌年に夏季大会と冬季大会ともに開催される。

 競技は夏季大会が21種目、冬季大会が7種目ある。三半規管に障害があり、きこえない人がいるため、平衡感覚が求められる体操やスキージャンプなどの競技をする選手は少ない。そうしたこともあり、デフリンピックでは体操やスキージャンプなどの競技はない。それ以外の種目は基本的に五輪と同じで、ルールも同じだ。

 ルールは同じでもデフリンピックならではの工夫がある。選手は競技が始まる時のスターターの音や、審判の笛がきこえない。このハンデを視覚的に補うことでプレーが進められる。

 陸上競技であればスタートランプ、サッカーなどの競技では審判が旗を使うなどして、選手に状況を知らせているのだ。

サッカーでは主審が旗と笛を使って合図し、陸上競技ではランプと音でスタートを知らせる(写真提供:全日本ろうあ連盟)

 このデフリンピックの夏季大会が2025年11月、日本で初めて開催されることになった。開催地は2021年に五輪・パラリンピックを開いた東京だ。