中国で高齢化が猛烈な勢いで進んでいる。介護施設も不十分で、一人っ子世代は夫婦で4人の高齢者を世話しなければならない。経済低迷が追い打ちをかけ、負担に耐えきれず「家族が崩壊する」との悲鳴も。私たち日本人にとっても高齢化による負担増はひとごとではないが、中国は日本を上回る「介護地獄」とも呼べる社会になりつつある。実態を見てみよう。
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
中国経済の状況は相変わらず芳しくない。
12月16日に発表された11月の小売売上高は前年比3%増となり、10月の4.8%増から大きく鈍化した。政府が買い替え支援を行っている自動車は6.6%増と好調だったが、化粧品は26.4%減と大幅なマイナスだった。
11月の消費者物価指数(CPI)も前年比0.2%の上昇にとどまった。10カ月連続でプラスを維持したものの、伸び率は10月から0.1ポイント鈍化。3カ月連続で伸びが縮小し、中国政府の目標(3%前後)に遠く及ばない。
政府は9月以降、大規模な金融緩和策を打ち出しているが、内需の弱さが改めて浮き彫りになっている。市場では「個人消費に対するさらなる刺激策が急務だ」との声が高まっている。
内需不足の主な要因は、一向に改善しない不動産市場の低迷だ。
11月の新築住宅価格の下落率は前月比0.1%と1年5カ月ぶりの小幅となったが、住宅販売の不振が続いている。
中国政府が16日に発表した1~11月の新築住宅の販売面積は前年比16%の減だった。ピーク時の2021年同期に比べると48%も減少している。政府は不動産セクターへの支援を実施しているが、その効果は現れていない。
中国共産党と政府は11日、来年の経済運営方針を決める中央経済工作会議で、景気底上げに向けて財政出動を拡大することを決定した。
これを受けて、中国共産党の政策決定機関である中央財経委員会は16日、消費者への財政支援を強化する方針を明らかにした。現在実施している需要の高い製品の買い替え支援に加え、社会保障の改善などを目指すとしている。
筆者が注目しているのは、中国政府がこのところ高齢者向けの支援を拡充する構えをみせていることだ。