急速に進む高齢化に政府の備えは不十分
中国政府は12日、一部都市で試験運用してきた個人年金制度を15日から全国に拡大すると発表した。中国では公的年金の財政が既に逼迫し、企業年金も未発達であることから、個人年金への注目が高まっている。新華社は6月「試験プログラムで6000万以上の口座が開設された」と報じている。
中国政府は翌13日、高齢者への資金支援を強化し、2028年までに高齢者介護向け財政支援制度の構築を目指すと明言した。
中国にも高齢化の波が押し寄せてきていることが背景にある。
中国の昨年末時点の65歳以上の人口は約2億1700万人で、高齢化率(全人口のうち65歳以上が占める比率)は15.4%だった。中国は既に高齢社会(高齢化率が14%以上)に仲間入りしている。
中国の高齢化の特徴は、人口の規模が巨大で、そのスピードが速いことだ。さらに問題なのは政府の備えは極めて不十分なことだ。
中国政府は10月11日、第5回中国都市・農村高齢者生活実態サンプル調査基礎データ公報(高齢者生活実態公報)を発表した。それによれば、2021年時点で60歳以上の高齢者のうち夫婦のみが45%、1人暮らしが14%だった。
中国ではこれまで多世代での同居が一般的であり、「高齢者の世話は家族が行うもの」とみなされてきた。だが、6割近くの高齢者が子供と別居している状況を踏まえると、「家族による介護モデル」を維持するのは限界に達しつつある。
中国の要介護高齢者は4000万人を超えており、介護者の内訳は配偶者が45.5%、子供が47.6%で、施設などでの介護は3.4%に過ぎない。
今後施設などでの介護が増加することが見込まれるが、費用負担の高さが足かせとなっている。重度の認知症など要介護度が高い場合のサービス費用は月額7000元(約14万7000円)を超え、ほとんどの高齢者の費用負担能力を超えている。
以上が高齢者生活実態公報の概要だ。
社会保障制度が未整備な中国では、介護の費用負担は子供たちにも重くのしかかる。「一人失能、全家失衡(一人が要介護などになったら、家族そのものが崩れるという意味)」という言葉があるほどだ。