駐日大使に指名されたジョージ・グラス氏(写真は2017年7月18日、ポルトガル大使就任のため上院でのヒアリングを受けた時のもの、写真:AP/アフロ)

トランプ会見で一喜一憂するニッポン

 ドナルド・トランプ氏の大統領就任(2025年1月20日)まで約1か月を残すばかりとなった12月15日は、期せずして(あるいはトランプ氏はそう計画して)「ジャパン・デイ」となった。

 トランプ氏が就任初日に打ち上げるアジェンダを小出しにしながら、閣僚・大使指名、大手企業最高幹部との面会に追われている。

 その合間を縫ってこの日、当選後初めて日本に振り向いてくれた。

 トランプ氏は、安倍晋三元首相(故人)の妻、昭恵氏や、ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長と米南部フロリダ州の邸宅「マール・ア・ラーゴ」で相次いで面会した。

 その直後、駐日米大使に大口選挙資金献金者の一人、ジョージ・グラス氏(56)を指名すると発表した。

政府抜きで進むトランプの対日接触

 トランプ氏との会談を切望する石破茂首相との会談は、まだ実現していない。

 それだけに、日本の一部メディアはトランプ氏がいつ石破茂首相に会ってくれるのか、一喜一憂している。

 2016年の大統領選に当選したばかりのトランプ氏に、ニューヨークにある自宅にまで押し掛けて面会できたのは安倍氏。

「トランプ氏と初めて会った外国首脳」という金看板を利用した安倍氏はその後、「史上最も友好的な日米関係を築き上げた」(米主要メディア)と、米サイドは見ている。

 日本政府関係者によると、トランプ氏と昭恵氏、孫氏との会見に日本政府は一切関わっていなかったという。

「トランプ氏が面会相手を選ぶ際に重視してきた条件は、自分に有利なビジネスを持ってくる相手、そして個人的に親しい間柄であることらしい」(ワシントンの政界通)。

 12月15日の昭恵氏との夕食会は後者にあてはまる。孫氏はむろん、カネ、ビジネスだ。

 安倍晋三氏は、トランプ氏がまだ政界のアウトサイダーだった2016年11月の大統領選直後、いち早くニューヨークのトランプ・タワーを訪れて会談し、トランプ氏に強い印象を残した。

 安倍氏はトランプ氏が大のゴルフ好きであることを知り、土産に高価なクラブを持参した。

 その後、両氏は会うごとにゴルフをプレーしながら親交を深めた。

 トランプ夫妻の訪日、安倍夫妻訪米の際には、昭恵氏とメラニア夫人も個人的な関係を深めた。

 今回の昭恵氏招待は安倍氏が残した個の交友関係の延長線上にあると、素直に見るべきだろう。

 これを首脳同士の絆が国家間の友好関係に反映される稀有なケースと見るべきか、過激な言動を売り物にするトランプ氏も一度気の合った相手との関係(たとえ相手が他界しようとも)は大事にする人情家だった、と見るべきか。

 それぞれ見方が分かれるかもしれない。

 が、米国サイドでみていると、トランプ氏は日本の一喜一憂ぶりを見てにっこりしているように見える。

 Teasing(焦らしている)しているのだ。