「異次元の怪物」大谷翔平選手も、レベルスイングを高次元で応用した究極のスイングだと掛布氏は評する(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

ホームラン王に3度輝いた“ミスター・タイガース”こと掛布雅之氏が、その打撃の真髄をはじめて公開した『掛布の打撃論』(日本実業出版社)。自身のバッティングテクニックを詳細に語る1冊から、ポイントを4回にわたって紹介する。第3回は、腰、肩、膝のラインを地面と平行に回す「レベルスイング」でボールを上げるためのスイング理論。

※本稿は『掛布の打撃論』(掛布雅之著、日本実業出版社)より一部抜粋・再編集したものです。

甲子園で逆方向にホームランを打つために

 私も現役時代、ホームランを打つため、ボールを上げるための打球角度というのは気にしていました。そのために取り入れたのがスポンジのボールを打つ室内での練習でした。打球角度が30度ぐらいでぶつかるところに幕を張って、投げてもらったスポンジボールを打ち返す、というものです。当時は今のように詳細なデータとか動作解析の機器はありませんが、肌で感じて取り入れた練習です。

 私は右投げ左打ちでしたが、左打者に不利な浜風が吹く甲子園球場を本拠地にしてホームランを打たないといけない宿命を背負わされていました。ホームランを増やすにはライトからレフト方向へと吹く風とケンカはできません。

 そこで、私が目指したのは左中間に一番強い打球が飛ぶスイングです。普通の左打者なら右中間への理想の打球を追求するのですが、本拠地・甲子園で逆方向にホームランを打つためのスイングをつくりあげたのです。

 話は少しそれますが、私は田淵さんがトレードとなって、周囲からホームランを求められる打者となりました。33歳で引退しましたが、打率3割、20本塁打の打撃で許される立場なら体の負担も少なく、もっと長く野球を続けられたかもしれません。利き腕の押し込みより、リードを優先する右投左打の打者は本来、本物のホームラン打者ではないのです。プロ野球最多の通算868本塁打の王さんも、3位の567本塁打の門田さんも左投左打です。