個人の武器を生かした適材適所が求められる

 右投左打でシーズン50本塁打を記録したのは松井秀喜氏だけ。私も最高で48本、金本知憲氏も40本が最高でした。そういう意味では右投左打で2021年にメジャーの本塁打王争いを演じた大谷選手は異次元の怪物です。そして、2022年に56本塁打で3冠王に輝いた村上宗隆選手も新しい時代のバケモノです。右投左打は、どちらかというと中距離からアベレージタイプなのですから。

 日米通算4367安打のとてつもない記録を残したイチロー氏だってそうです。彼もホームランを狙えばもっと打てたはずです。しかし、人並み外れたスピードとか、自分の野球のスタイルを考えたときに、シーズン30本のホームランを狙うより、200本以上のヒットを狙ったほうが確実に成功すると思ったのでしょう。

右投左打は、中距離からアベレージタイプ。代表例がイチロー選手だと掛布氏(写真:共同通信社)

 野球というスポーツは全員がホームラン打者を目指せばいいというものではありません。個人の武器を生かした適材適所が求められるのです。個人として野球人生の大局観もあります。3割を5年打つのと、40本塁打を5年打つのでは、どっちが大変か。私のように小さい体で後者の選択をすると、体がボロボロになってしまうのです。

ボールの真ん中よりやや下にバットを入れる

 話を戻します。スポンジボールを使った練習で打球スピンをかけることを意識していた私は、普段の打撃練習でも打球角度を気にしていました。

 ボールにグラウンドの土をつけるような打球は一切打ちませんでした。通常はワンバウンドで打ち返すトスバッティングでもハーフライナーを心掛けました。ボールにスピンをかけて、キャッチボールの返球のように相手の胸に打ち返す感じです。そのときに意識していたのが、ボールの真ん中より、やや下にレベル軌道でバットを入れることでした。