もともとレベルスイングの基本は、入団2年目に打撃コーチに就任した山内一弘さんにたたき込まれたものでした。山内さんは熱心な指導ぶりが有名な人で、「かっぱえびせん」の異名を持っていました。「やめられない、とまらない」のキャッチコピーでおなじみだったスナック菓子にちなんだものです。
私がよくやらされた練習が、体の正面からトスを上げられて、バットの両面で払うように左右に打つティー打撃でした。膝、腰、肩をレベルに使う軸回転を反復練習で覚えさせられました。
バットの上でボールをこするイメージ(写真:上野裕二)
グラウンドだけでなく、合宿所でも指導は止まりません。一人で寮の屋上で素振りをしていると、終わる頃を見計らって、現れるのです。そして、ゴルフクラブを2本、上下に30センチぐらいの幅で突き出して、「この間をバットが抜けるようにスイングしろ」と言うのです。これは体がレベルに使えないと、そのゾーンにバットは入っていきません。まさにアッパーでもダウンでもない、レベルスイングが求められたのです。
速く投げることと、遠くへ飛ばすスイングの共通点
高校時代、私たちの時代はエースで4番が普通でしたが、現代は投げることに秀でた選手は投手専念といった時代になりました。昔は野球の一番上手な選手が投手をやって、中軸を打つのが当然だったのです。速いボールを投げられるということは、下半身の切れが抜群なわけですから。ましてや金属バットではなく、木のバットの時代でしたから、余計に下半身をはじめ、全身をうまく使わないといけなかったのです。
振り返ってみれば、球史に残る打者で高校時代にエースだった人がたくさんいます。王貞治さんも、イチロー氏もそうです。やっぱり、打つことと、投げることは、体重移動とか体の使い方で共通点が多いのです。
