掛布氏の現役時代のバッティングフォーム(写真:共同通信イメージズ)

ホームラン王に3度輝いた“ミスター・タイガース”こと掛布雅之氏が、その打撃の真髄をはじめて公開した『掛布の打撃論』(日本実業出版社)。自身のバッティングテクニックを詳細に語る1冊から、ポイントを4回にわたって紹介する。第1回は、打撃の基本である体の回転動作について。

※本稿は『掛布の打撃論』(掛布雅之著、日本実業出版社)より一部抜粋・再編集したものです。

打撃の基本はキャッチボール

 打撃の基本はキャッチボールにある——。私の打撃論はここから始めたいと思います。

 野球経験者なら「キャッチボールを大切にしなさい」と教わったことがあるかもしれません。きっと素晴らしい指導者だったと思います。まさしく、その教えの通りです。

 なぜキャッチボールが大事かと言えば、第一に、ボールをちゃんと見なければ打つことも、投げることも、捕ることもできるわけがないのです。当たり前のことのようですが、私自身、プロになってコーチから最初にそう言われ、初めて意識したことでもあります。だから、まずはキャッチボールでしっかりボールを見なさいということです。

 体の使い方もキャッチボールの動作の中で学べます。強く投げるにはどうすればいいか。「押す」動作では、速い球も、遠くへ飛ばすこともできません。押すのではなく、必要なのは「回転」動作です。

首をしっかり真っすぐ立てて背骨の上に乗せる

 体を強く回転して強く投げたり、遠くへボールを飛ばしたり、その体を回転させる軸というのは「背骨」です。その背骨を真っすぐ立てるために、またボールをしっかり見るために、首をしっかり真っすぐ立てて背骨の上に乗せる、ということが一番大切なことなのです。

 体を強く回転させることで強く投げたり、遠くへ飛ばしたりができるわけです。この回転動作は、「投げる」だけでなく「打つ」ことにも共通します。

掛布の打撃論』(掛布雅之著、日本実業出版社)

首から背骨の回転軸をつくる

 体をきれいに回転させるために意識しなければいけないのが、首から背骨の一本軸となる回転軸です。斜めになったり、前や後ろに倒れすぎていては、軸がぶれて、きれいな回転はできません。簡単なようですが、回転軸を意識できないために上達できない選手も多いのです。

 まず打つという前に、ボールをしっかり見るための体の形、肩、腰、膝、これはグラウンドレベルにしておかなければ、当然、軸は曲がります。

 一番大切なのは、ボールを見るために首を真っすぐ立てることです。そうすることで、軸を安定させることにつながります。

 少しアゴを引いて背骨の上にしっかり乗せることで、1本の軸ができます。縦だけでなく、体の横のラインも意識しなければいけません。肩、腰、膝をグラウンドと平行(レベル)に回転させます。ここがぶれると、体は真っすぐ回転できません。これは投げることだけでなく、レベルスイングを実現させるための根幹になることです。