プロ転向後も厳しい練習で技術も表現力も磨いてきた羽生結弦さん(写真は2022年撮影)。12月7日に30歳になった(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)

(前編から読む)>>【詳報:羽生結弦、30歳の舞①】「命」の物語を自らつづり、滑る理由…プロスケーターとして到達した哲学的境地とは

 五輪2連覇を成し遂げ、プロに転向したフィギュアスケーター、羽生結弦さんの新たな単独公演「Yuzuru Hanyu ICE STORY 3rd  “Echoes of Life” TOUR」が12月7日、さいたまスーパーアリーナでスタートした。出演も制作総指揮も担うアイスストーリーの第3弾である。

 「命」の意味を問う哲学をテーマにした壮大な物語を氷上に結実させたこの日は、30歳の節目を迎えた一日でもあった。「産声~めぐり」など多くの新曲を含む本編12曲を演じ切り、エンドロールが流れた直後、“素顔”の羽生さんが再びリンクへ登場する。表現者の鎧を脱いだ羽生さんのマイクパフォーマンスと会場が織りなす一体感、そして圧巻の「SEIMEI」などを舞ったアンコール3曲という“第2章”は、単独公演のもう一つの醍醐味でもあった。

単独公演は「羽生結弦誕生祭2024」に

「えー、本日はご来場いただきありがとうございます!初演でしたが、いかがだったでしょうか。いま、世界中で配信をご覧になられている方、この会場で空気を感じながら観てくださっている方々、たくさんの方に公演を楽しみにしていただいて、プレッシャーや期待、重責を僕はもちろん、スタッフのメンバーみんなで感じながら、時間もエネルギーもたくさん使って創り上げてきました。少しでも、この公演が、この物語が、皆さんの生きる糧になったらいいなと思っています。本日はありがとうございました!」

 白のTシャツ姿で初日公演の重圧から少しだけ解き放たれた羽生さんが、笑顔とともに再びリンクインすると、会場はこれまでとはまた違った熱を帯びる。

 そこで展開される優しい語り口のマイクパフォーマンスはすっかり恒例となった。

 この日は、とっておきの発表があった。

 12月7日。羽生さんの誕生日だった。羽生さんは公演に携わったメンバーへの拍手を促した後、トーンを変えて、少し照れたような声で叫んだ。

「ということで誕生日です!イェーイ!生まれたー、生まれたよー。せーの!」

 会場からは『ありがとう』という声も響いた。

「待って、待って!そうか、(おめでとうではなく)その流れもあるのか(笑)」と戸惑った後に、会場からのバースデー・ソングにうれしそうな笑みを浮かべた。

「ありがとうございまーす!これだけのハッピーバースデーは、なかなかないですよね。本当にうれしいです。何万人が観てくださっているんですかね、ライブの皆さんも、テレビの前の皆さんも歌ってくださったんですかね。本当にうれしいです。ありがとうございました!」

 哲学的な壮大なテーマに挑んだ羽生さんの単独公演は急きょ、「羽生結弦誕生祭2024」へとタイトルが変わる。

 そして、羽生さんはマイクでアナウンスする。