
(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)
(前編から読む)>>【詳報:羽生結弦、30歳の舞①】「命」の物語を自らつづり、滑る理由…プロスケーターとして到達した哲学的境地とは
五輪2連覇を成し遂げ、プロに転向したフィギュアスケーター、羽生結弦さんの新たな単独公演「Yuzuru Hanyu ICE STORY 3rd “Echoes of Life” TOUR」が12月7日、さいたまスーパーアリーナでスタートした。出演も制作総指揮も担うアイスストーリーの第3弾である。
「命」の意味を問う哲学をテーマにした壮大な物語を氷上に結実させたこの日は、30歳の節目を迎えた一日でもあった。「産声~めぐり」など多くの新曲を含む本編12曲を演じ切り、エンドロールが流れた直後、“素顔”の羽生さんが再びリンクへ登場する。表現者の鎧を脱いだ羽生さんのマイクパフォーマンスと会場が織りなす一体感、そして圧巻の「SEIMEI」などを舞ったアンコール3曲という“第2章”は、単独公演のもう一つの醍醐味でもあった。
単独公演は「羽生結弦誕生祭2024」に
「えー、本日はご来場いただきありがとうございます!初演でしたが、いかがだったでしょうか。いま、世界中で配信をご覧になられている方、この会場で空気を感じながら観てくださっている方々、たくさんの方に公演を楽しみにしていただいて、プレッシャーや期待、重責を僕はもちろん、スタッフのメンバーみんなで感じながら、時間もエネルギーもたくさん使って創り上げてきました。少しでも、この公演が、この物語が、皆さんの生きる糧になったらいいなと思っています。本日はありがとうございました!」
白のTシャツ姿で初日公演の重圧から少しだけ解き放たれた羽生さんが、笑顔とともに再びリンクインすると、会場はこれまでとはまた違った熱を帯びる。
そこで展開される優しい語り口のマイクパフォーマンスはすっかり恒例となった。
この日は、とっておきの発表があった。
12月7日。羽生さんの誕生日だった。羽生さんは公演に携わったメンバーへの拍手を促した後、トーンを変えて、少し照れたような声で叫んだ。
「ということで誕生日です!イェーイ!生まれたー、生まれたよー。せーの!」
会場からは『ありがとう』という声も響いた。
「待って、待って!そうか、(おめでとうではなく)その流れもあるのか(笑)」と戸惑った後に、会場からのバースデー・ソングにうれしそうな笑みを浮かべた。
「ありがとうございまーす!これだけのハッピーバースデーは、なかなかないですよね。本当にうれしいです。何万人が観てくださっているんですかね、ライブの皆さんも、テレビの前の皆さんも歌ってくださったんですかね。本当にうれしいです。ありがとうございました!」
哲学的な壮大なテーマに挑んだ羽生さんの単独公演は急きょ、「羽生結弦誕生祭2024」へとタイトルが変わる。
そして、羽生さんはマイクでアナウンスする。