平賀源内平賀源内(写真:近現代PL/アフロ)

 2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう』では、江戸時代中期に数多くのクリエーターをプロデュースした蔦屋重三郎(つたや・じゅうざぶろう)が主役に選ばれ、話題となっている。第4回「『雛(ひな)形若菜』の甘い罠」では、皆の要望を受けて重三郎が錦絵の制作に着手。西村屋の協力を得ることになったのだが……。『なにかと人間くさい徳川将軍』など江戸時代の歴代将軍を解説した著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)

>>【写真】平賀源内記念館(香川県さぬき市)に展示されている「エレキテル」

吉原の高名な花魁を描いた錦絵シリーズ『雛形若菜初模様』とは?

 蔦屋重三郎は、江戸文化の発展にどんな足跡を残したのか。放送回を重ねるごとに、それが具体的な作品として見えてくるのが、今回の大河ドラマ『べらぼう』の面白いところだ。

 第1回放送では、客足が遠のいたことで、苦境に陥る吉原の様子が描かれた。その問題解決に立ち上がったのが、横浜流星演じる蔦屋重三郎である。

 吉原を盛り上げるために、重三郎は具体的に何をしたのか。第2回放送では、吉原のガイド本『細見嗚呼御江戸(さいけんああおえど)』の編集に携わり、平賀源内に序文を書かせることに成功。出版人としての活動をスタートさせた。第3回放送では、遊女評判本『一目千本(ひとめせんぼん)』の発刊へ動く。『一目千本』の制作プロセスまで丁寧に描写された。

 そして第4回となる今回もまた、重三郎によって新たな刊行物が生み出された。吉原の高名な花魁(おいらん)を描いた錦絵シリーズの『雛形若菜初模様(ひながたわかなのはつもよう)』だ。

 江戸時代に描かれた風俗画全般を「浮世絵」と呼び、浮世絵の中でも多色摺りによる木版画のことを「錦絵(にしきえ)」という。

 錦絵シリーズである『雛形若菜初模様』の特徴は、何といっても花魁のまとう流行の着物や結い上げられた髪型を、美しく色鮮やかに描いていること。絵を描いたのは、美人画の第一人者ともされている、絵師の礒田湖龍斎(いそだ・こりゅうさい)だ。ドラマでは、お笑い芸人の鉄拳が素顔を出して、礒田湖龍斎を演じて話題となった。