
(鷹橋忍:ライター)
大河ドラマ『べらぼう』において、安田顕が演じる平賀源内を取り上げたい。
変化龍の如し
平賀源内の名で知られているが、源内は通称で、諱は国倫(くにとも)、字(あざな)は子彝(しい)という(ここでは、源内と表記)。
本草学(薬用となる植物や鉱物を研究する薬物学)・物産学者、鉱山技師、戯作者、浄瑠璃作者、発明家など、自ら「変化龍の如し」と称したようにいくつもの顔をもち、西洋風の油絵も描く源内は、戯作者としては風来山人(ふうらいさんじん)、天竺浪人(てんじくろうにん)、浄瑠璃作者としては福内鬼外(ふくちきがい)、油絵や物産学においては鳩溪(きゅうけい)と号するなど、名や号を使い分けた。
ドラマで蔦屋重三郎に称したように、貧家銭内(ひんかぜにない)と、戯れに名乗ったこともあるという(以上、芳賀徹『平賀源内』)。
その源内が生まれたのは、八代将軍・徳川吉宗の治世だった享保13年(1728)とされる。
寛延3年(1750)生まれの蔦屋重三郎よりも、22歳年上となる。
生地は、讃岐国寒川郡志度浦(香川県さぬき市志度)で、父は高松藩の米蔵番を務める白石茂左衛門(良房)、母は山下氏の娘だ。
父は、「一人扶持切米三石」という下級武士であったが、農業を本業としていたと考えられており、比較的裕福だったようである。