
(立川 談慶:落語家、著述家、筋トレ愛好家)
NHK大河ドラマ「べらぼう」が今月からスタートしました。江戸時代のメディアプロデューサーともいうべき蔦屋重三郎(主演・横浜流星)の生涯を描く物語に、江戸を舞台とした落語を生業としている私としては初回から目を奪われっぱなしです。
吉原育ちの蔦重が、年に2回発行されていた吉原のガイドブック「吉原細見」を流行させることで傾きつつあった吉原を復興させるといった手腕を発揮していく物語です。
第2回放送では、「江戸のマルチクリエイター」たる平賀源内(安田顕)に「吉原細見」の冒頭コラムを書かせることを思いつき、源内の「センシティブな好み」を把握し、花の井花魁=おいらん=(小芝風花)のサポートを得つつ、見事に本懐を遂げる展開にくぎ付けになりました。
その伏線となっていたのが、江戸中期の経済政策を担った老中・田沼意次(渡辺謙)から「客を集める工夫をしているのか」と諭されたことでした。
この先、蔦重は現代に残る出版社の呼称「版元」を事業として確立させてゆくのですが、私の地元・浦和の書店「須原屋」のご先祖たる須原屋市兵衛(里見浩太朗)が登場したりと、今後の展開が楽しみです。
まして私の稼業こそ江戸文化を後世に伝える役割も担う落語家でもあります。「課題図書」ならぬ「課題番組」とも言えましょう。
落語にも吉原を舞台にした「廓噺(くるわばなし)」がたくさんあります。名作も少なくありません。『紺屋高尾』がその代表作です。では、簡単にあらすじをご紹介しましょう。