- 故ジャニー喜多川氏による「性的搾取」問題を落語に照らして読み解いてみた。
- 加害者本人が不在のまま進む展開は、長屋のごろつき「らくだ」の死後の物語を彷彿とさせる。
- そこにさらに、マルクスの「資本論」を掛け合わせると見えてくる、卑劣な搾取の構図とは。
(立川 談慶:落語家、著述家、筋トレ愛好家)
収まるところを知らないジャニーズ問題であります。最新の情報によりますと、「ジャニーズ性加害問題当事者の会」は16日、同事務所の改名を受けジャニーズ事務所に宛てた「最後の要請書」を公開したとのことです。
ジャニーズ事務所は17日、創業者・故ジャニー喜多川氏の性加害問題を受けて社名を「SMILE-UP.(スマイルアップ)」に変更しました。これに先立ち、当事者の会は要請書で「ジャニー喜多川の犯した加害から得られた利益の上に立つ、いわば『負の遺産』を継承することは許せません。犯罪の渦中で得たと想定される利益はすべて被害者の救済や補償に充てるべき」といった考えを表明しています*1。
*1:【要請書】「ジャニーズ事務所」宛に最後の要請書(ジャニーズ性加害問題当事者の会)
要望書では、具体的な補償額・事務所側が補償にいくら予算計上しているかなど、より詳細な金銭的補償内容の公表を求めています。また、ジャニーズ事務所(SMILE-UP.)と既存の被害者救済委員会に当事者の会が推奨する複数名が参加することなどを求めました。被害者の会が「最後の」としたように、被害者の方々が納得するようなジャニーズ事務所側の対応が求められるところです。
とにもかくにも、今回の一件でジャニー喜多川氏のプロデューサーとしての功績は完全に水泡に帰しました。ジャニー喜多川氏による「性的搾取」は言語道断。「かけがえのない大切な思い出」が傷つけられてしまったジャニーズファンの皆さんもある意味で被害者です。その穏やかならぬ心中をお察しします。
そして、、、
加害者であるジャニー喜多川氏がすでにこの世にいないという状態が、この問題を一層複雑で、かつ面倒なものにさせているように思えてなりません。生きていたらどうなっていたかはわかりませんが、加害者不在のまま過去の所業が次々と明るみ出て、残されたジャニーズ事務所の関係者と被害者が対峙する様子は、古典落語の「らくだ」を彷彿とさせるものがあります。
「らくだ」のあらすじは、このようなものです。