- 甘い言葉でたくみに若者を犯罪に誘い込む「闇バイト」。手軽に高収入を得たいというイマドキの価値観が、ネット時代の犯罪を誘発している。
- 「ルフィ」と名乗り実行犯を陰で操る指示役がいる犯罪グループが注目されたが、似たような構図はカネに目がくらんだ男の末路を描いた落語『死神』にも登場する。
- 資本主義が生み出した格差がモラルハザードを招いているのか。落語で読み解いてみた。
(立川 談慶:落語家、著述家、筋トレ愛好家)
「闇バイト」とは、高額な報酬を受け取る代わりに、犯罪行為を代行するアルバイトのこと。非合法な「悪事」とお手頃感覚の「バイト」という、本来結びつくはずもない2つが「悪魔合体」した格好でしょうか。SNSやインターネット掲示板、求人サイトなどで、「高収入」「高額報酬」「高額バイト」「簡単な仕事」などと甘い誘いで募集されています。
今年は「闇バイト」に関連し、全国で白昼堂々と犯行に及ぶ凶悪な強盗事件が相次ぎました。特に2月には「ルフィ」を名乗る指示役らの日本人4人がフィリピンの入管施設から強制送還され、逮捕された事件が話題になりました。
30年以上続く不景気で、一般庶民の懐はずっと寂しい状態が続いています。片や、多額の報酬を稼ぐ一部のYouTuberなどがカリスマ的な存在になっています。経済的に苦しむ若者にとって、一見すると「割のよさそうな仕事」は喉から手が出るほどの「救い」に見えてしまうのかもしれません。まさに、ネット社会の現代を象徴する事件です。
そんな「闇バイト」を予言しているかのような落語があります。『死神』という話です。主人公は、まさに人生が詰んでしまったような男です。