岸田首相は「太鼓持ち」(写真:つのだよしお/アフロ)
  • 6月から定額減税が実施されます。1人あたり年間で所得税3万円、住民税1万円、計4万円が減税されるという、庶民にはうれしい話です。
  • 支持率が低迷する岸田首相が「増税メガネ」のイメージ払拭を狙った政策との見方もあるなか、落語家・立川談慶師匠にはある人物像が思い浮かびました。落語によく登場する「幇間(ほうかん=太鼓持ち)」です。
  • スポンサーである若旦那の顔色ばかりうかがい、結局は墓穴を掘ってしまう。その姑息で救いようのない情けなさが、岸田首相とどこか似ている?(JBpress)

(立川 談慶:落語家、著述家、筋トレ愛好家)

 いやはや、「1人4万円の定額減税」がこの6月から実施されます。会社勤めの皆さんは、夏季のボーナスを心待ちにしている人も多いかと思いますが、この定額減税も懐を多少なりとも財布のひもを緩めるのでしょうか。

 昨今の円安・インフレで賃上げ効果が打ち消され実質賃金のマイナスが続いているなか、岸田文雄首相の肝いりで、経済対策の目玉として盛り込まれました。政府は、国民の皆さんのために「やってる感」のアピールに必死です。

政府広報オンラインのXへの投稿より
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 あるテレビのニュース番組では、定額減税を実施するための追加的な仕事に忙殺されている中小企業の経理担当者が悪戦苦闘する様子を映していました。その人たちの残業代が4万円を超えたらどうなるのでしょうか。まさにギャグみたいな様相を呈しています。

 朝日新聞によると、定額減税の実施には、こんな経緯があったようです。

減税は国会審議を経た税制改正が必要なため、給付金と比べて国民のもとへ届くのに時間がかかる。当時、検討を指示された自民党内からも「減税では即効性に欠ける」「実感しづらい」という声が上がったが、首相は「税収増を国民に適切に還元する」と減税にこだわった。
(朝日新聞デジタル「首相主導の定額減税、政権浮揚狙ったはずが裏目 自民からは継続論も」 5月31日)

 まさに、自分に名付けられた「増税メガネ」というニックネームの払拭に躍起になっているかの感が伝わってきますなあ。

 いや、大衆なんていい加減なもんで、減税したとしたら、今度は減税によって人気取りをしようしている姿を揶揄(やゆ)して「減税メガネ」と名付けるだけでしょう。

 しかも、冒頭の経理担当者に余計な仕事を増やしてしまったきっかけが、岸田さんの発案だったというのだから、あきれてしまいます。自分の手柄をアピールしたいのでしょうか、「給与明細に減税額を明記するよう義務づけた」というのです。いかにも姑息なやり口にも見えてしまいます。

 これに対しては野党が激しく反発し、先の朝日新聞記事によると「政策アピールのために余計な事務負担を増やす」(国民民主党・玉木雄一郎代表)、「国民にありがたみを感じるようにと言わんばかりの態度だ」(立憲民主党・安住淳国会対策委員長)などと、とんだ騒動となっていました。

 しかもその4万円の減税は1回のみとのこと。はやくも「焼け石に水」になりそうな予感でいっぱいであります。

 なんか後手後手に回っている岸田さんは誰かに似ているなあと思っていたら、落語に出て来る「一八(いっぱち)」という幇間(ほうかん=太鼓持ち)でした。