(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)
  • 堀江貴文、森永卓郎、池上彰、柳井正…著名人をかたる投資詐欺の広告がSNSにあふれ、被害が広がっている模様です。
  • 報道によるとLINEグループなどを使って巧みに信じ込ませ、多額の資金を巻き上げているようです。
  • 史上最高値を記録した日経平均株価や新NISAなど、世間は投資に浮き足だつなか、そんな状況につけ込む詐欺師の常套手段と庶民の防衛策を、落語「壺算」から学んでみましょう。

(立川 談慶:落語家、著述家、筋トレ愛好家)

 連日のように報道される「新NISA」、そしてこれまた連日のように更新する日経平均株価であります。いま、NISAで投資を始めなければ損をする、もしくは、いまNISAを始めれば必ず儲かる…。そんな「投資熱」が高まっています。

 多くの一般庶民が、「儲け話に乗り遅れちゃダメだ」と浮き足立っているように思えてなりません。

 そんな浮き足だつ庶民につけ込むかのように、有名人の名前や写真を無断で使って投資を誘うニセの広告がSNSで大量に掲載されていて、その被害も拡大しています。

 拙著「落語で資本論」を絶賛してくださった森永卓郎さんをはじめ、池上彰さん、そして堀江貴文さん、ユニクロを展開するファーストリテイリング会長兼社長の柳井正さん…。こうした超有名人たちをかたったSNSの広告が、あたかもご本人が「確実に儲かる」と勧めているかのような匂いで誘いをかけてきます。

堀江貴文さんをかたる投資詐欺が広がった(写真:共同通信社)

「今すぐに買え!2024年 100倍」「池上彰氏が推奨する優良株」「森永卓郎の私の株式投資の経験と投資スキルを無料で提供します」などなど。

 今、こうした広告を入口に、お金を騙し取られる人が急増しているとのことです。先日のニュース番組では、数千万円も騙し取られる被害に遭った人もいると報道していました。

 被害総額は莫大でしょう。

立川談慶(たてかわ・だんけい) 落語家。立川流真打ち。
1965年、長野県上田市生まれ。慶應義塾大学経済学部でマルクス経済学を専攻。卒業後、株式会社ワコールで3年間の勤務を経て、1991年に立川談志18番目の弟子として入門。前座名は「立川ワコール」。二つ目昇進を機に2000年、「立川談慶」を命名。2005年、真打ちに昇進。慶應義塾大学卒で初めての真打ちとなる。著書に『教養としての落語』(サンマーク出版)、『なぜ与太郎は頭のいい人よりうまくいくのか』(日本実業出版社)、『いつも同じお題なのに、なぜ落語家の話は面白いのか』(大和書房)、『大事なことはすべて立川談志に教わった』(ベストセラーズ)、『「めんどうくさい人」の接し方、かわし方』(PHP文庫)、小説家デビュー作となった『花は咲けども噺せども 神様がくれた高座』(PHP文芸文庫)、『落語で資本論 世知辛い資本主義社会のいなし方』など多数の“本書く派”落語家にして、ベンチプレスで100㎏を挙上する怪力。

 手口を探ってみますと、SNSに掲載されたこのような投資に関する広告をクリックすると、LINEのグループトークに招待されるとのこと。そこで「初心者投資クラス」などというグループ名に参加してゆくのが「キッカケ」とのことでした。

 実際には、そのグループのメンバーはほぼ「サクラ」でしょう。すべて犯人グループが書き込んでいるに違いありません。

 そうとは知らない無垢な方が、そのグループ内で「おかげさまで1000ドル稼げました」みたいな人が続出しているかの印象を持ってしまえば、その仲間になろうとして、虎の子ともいうべき財産をついつい出してしまうのも当然であります。まして、顔の売れている有名人がバックについていると思えば、信用してしまうのが人情というものです。

 無垢な方だけではなく、最初は疑っていた、という被害者のコメントもメディアで報じられています。疑っていたのに、なぜだまされていくのでしょうか。