4万円じゃ、景気浮揚はムリじゃない?

 落語は勧善懲悪ではなく、ドジはどこまでもドジで、ダメなものはどこまでもダメなものだというばかばかしさこそが本分であります。

 話を元に戻しますが、岸田さんが一八っぽいのは、「支持率が圧倒的に低いのに、なぜか根拠のない自信にあふれているところ」でしょうか。そしてさらには、一八における「若旦那」などのように、岸田さんにおけるスポンサー、つまり国民の顔色しかうかがっていないような日和見な姿勢が、今回の定額減税などの政策から浮かび上がって来ませんでしょうか。

 もちろん、国民の声に応えることは大切ですし、支持率や人気は無視できません。

 でも、人気はあくまでも瞬間風速的なもので、そればかりに左右されていては、本来必要な長期目線で日本を元気にする政策は実行できないのではないでしょうか。

 一八ならば本来、芸人としてプロの幇間の真骨頂である歌舞音曲などの技芸に精進すべきでありましょう。同じように政治家ならば、小手先ではない骨太の政策を打ち出してゆくべきなのではないでしょうか(もっとも、そうなってしまったらこの落語も「増税メガネ」も全く面白くなくなりますが…)。

 いまや「若旦那」たる国民の多くにとって、自由に使えるカネは微々たるもので、塗炭の苦しみを味わっているのが令和6年の現状なのです。もはや1回だけの「4万円給付」で景気浮揚が達成できるわけなどありませんもの。

 まさに「定額減税」というよりも「低額減税」になりそうですな。

 やはり、向き合うべきは国民の顔色ではありません。「裏金問題」も含めてもっと諸問題の本質という肝心な方向に向いてもらいたいものであります。

 というわけで岸田さんには「太鼓持ち」ではなく、きっちりと国のリズムを刻み、国民、経済を高揚させるドラムのような差配を望みたいものであります。

立川談慶(たてかわ・だんけい) 落語家。立川流真打ち。
1965年、長野県上田市生まれ。慶應義塾大学経済学部でマルクス経済学を専攻。卒業後、株式会社ワコールで3年間の勤務を経て、1991年に立川談志18番目の弟子として入門。前座名は「立川ワコール」。二つ目昇進を機に2000年、「立川談慶」を命名。2005年、真打ちに昇進。慶應義塾大学卒で初めての真打ちとなる。著書に『教養としての落語』(サンマーク出版)、『なぜ与太郎は頭のいい人よりうまくいくのか』(日本実業出版社)、『いつも同じお題なのに、なぜ落語家の話は面白いのか』(大和書房)、『大事なことはすべて立川談志に教わった』(ベストセラーズ)、『「めんどうくさい人」の接し方、かわし方』(PHP文庫)、小説家デビュー作となった『花は咲けども噺せども 神様がくれた高座』(PHP文芸文庫)、『落語で資本論 世知辛い資本主義社会のいなし方』など多数の“本書く派”落語家にして、ベンチプレスで100㎏を挙上する怪力。