来日したトランプ米大統領(右)と高市早苗首相(写真:ロイター/アフロ)
(立川 談慶:落語家、著述家、筋トレ愛好家)
落語の世界には、江戸の庶民が織りなす人間模様が描かれています。そこに登場する女性たちは、決して華やかな主役ではありません。とはいえ、男と女は合わせ鏡のようで、女性たちは旦那のピンチを影で救う「切り札」として描かれる場合が多いものであります。
ドジを踏むたび、女房が機転を利かせて事なきを得るような場面がいくつも出てくるのです。江戸時代以降、世の仕組みが変わっても、いつの世も「男のバカと女の利口は釣り合う」と言い放つ落語の世界観は微笑ましく、したたかに、しなやかにこの国に住む人々の心を癒し続けて参りました。
最近の「高市早苗フィーバー」とも言えるような状況を見ていると、そんな古典の定番とも言える人間偶像劇から、その背景を読み解いてみたくなりました。
初の女性首相として注目を集める高市さん。首相就任時の内閣支持率は歴代稀に見るほど高く、株価も急上昇中で5万円をサクッと突破。日米、日中、日韓と、「ビッグ3」とも言うべき会談を立て続けにこなし、いささか面倒な問題を抱える各国との関係も、ひとまずは好スタートを切ったとの評価のようです。
とても自民党が少数与党だとは思えない勢いであります。
「名前が早苗だから、米(国)とは相性がいいのか」などとくだらないことを考えつつも、停滞する日本において、落語に登場する女房のような「何か変えてくれる予感」が、その支持の原動力になっているのでは、とお見受けします。とまれ右側に大きく思考が偏っているとの評判もありますが、多かれ少なかれ、高市さんもまた、大衆から日本を変える「切り札」として期待されているということでしょう。
お断りしておきますが、決して私は高市さん支持でも不支持でもありません。右、左は関係なく、野次馬的に芸人的無責任な立場から、落語家的に女性初の首相誕生について考察を重ねて参りたく存じます。
まず、今回しっくりくるなあと思ったのが『錦の袈裟(けさ)』という噺(はなし)です。
