2026年2月13日、ミラノ・コルティナ五輪、フィギュアスケート男子、鍵山優真(右)が銀、佐藤駿が銅メダル 写真/Raniero Corbelletti/アフロスポーツ
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(松原孝臣:ライター)

「何が理由であったのかは分かりません」

 2月13日、ミラノ・コルティナオリンピックはフィギュアスケート男子フリーが行われた。

 その結果は、誰もが予想しえないものとなった。

 金メダルの最有力候補と言われていたのはイリア・マリニン(アメリカ)。世界初の4回転アクセル成功者で、今もただ一人の成功者だ。それにとどまらず、4回転ジャンプを異次元のレベルで組み込み、フリーでは得点が1.1倍になる後半にコンビネーションジャンプをすべて入れる構成。成功率も高く、大会では圧倒してきた。

 昨シーズンの世界選手権では318.56点で金メダル。2位のミハイル・シャイドロフ(カザフスタン)は287.47点だから大差での優勝だ。今シーズンのグランプリファイナルでは332.29点で優勝。2位の鍵山優真が302.41点であるから、ここでも大差をつけた。2023年のグランプリシリーズ・フランス大会で2位だったのを最後に、オリンピックまですべての大会で優勝している。それもマリニンの強さを物語っている。

 迎えた初めての大舞台、ショートプログラム1位に立ち、フリーは最終滑走。だがその演技は、本来のそれにはほど遠かった。

 冒頭の4回転フリップは成功させたが、2つ目は1回転半に。その後も転倒するジャンプがあれば、4回転が2回転になるケースもあり、ジャンプのミスが頻発する。

 フリーは156.33点で15位。総合でも264.49点で8位。フリーの自己ベスト238.24点、総合得点の自己ベスト333.81点からかけ離れた点数であったことが、演技の内容を示している。

 マリニン自身は、試合後、金メダル候補として扱われることの重圧があったことを言葉にしている。

 また、団体戦のショートプログラム、フリー双方に出て疲労が残った可能性、調整の難しさがあった可能性も考えられるが、「正直、何が理由であったのかは分かりません」と言うのも率直なところだろう。

 スポーツに絶対はないことをあらためて知らしめる出来事であった。そしてマリニンの力量を考えれば、巻き返してさらに進化していくことはできる。2018年平昌五輪のショートプログラムで失敗して表彰台を逃し、その後、格段に強さを備えた北京五輪金メダリスト、ネイサン・チェン(アメリカ)というモデルもいる。これからを楽しみにしたい。