2025年12月5日、グランプリファイナル、ペアフリーで演技する三浦璃来(手前)、木原龍一組 写真/共同通信社
(松原孝臣:ライター)
グランプリファイナルで優勝
12月4日から6日にかけて、フィギュアスケートのグランプリファイナルが名古屋市のIGアリーナで行われた。
出場した日本選手の活躍がさまざま見られる中、ひときわ輝きを放ったのがペアの三浦璃来/木原龍一であった。ショートプログラムでトップに立つとフリーでもその順位を守り切り、優勝を果たしたのである。
そのフリーは完璧な演技にはならなかった。トリプルトウループからの3連続ジャンプでは、最後のジャンプで木原が手をついたことで減点された。後半にはスロージャンプで三浦の着氷が乱れた。
自分のミスを悔やみ、フリーの演技が終わった直後、木原は三浦に向かって、詫びるように手を合わせた。ただ三浦はフィニッシュの瞬間に力強くガッツポーズし笑顔を見せた。
試合を終えて、三浦はこう振り返る。
「(北京)オリンピック以降、完璧なノーミスっていうのが出ていなかったので、今日もちょこちょこミスはあったんですけど、ストップ&ゴーなく最後までやりきれたかな、っていうガッツポーズでした」
その笑顔につられるように、木原の表情も柔らかくなっていく。そして穏やかな笑みとともに語った。
「前のイタリアのペアだけでなく、皆さんいい演技をされたんだな、という空気感がすごく伝わってきていました。私たちもナーバスになることなくいい波に乗れるかな、と思っていたので、ほんとうに自分たちらしい滑りがすることができて、今後につながっていけばいいな、と思っています」
その言葉の直前には、プロトコルを確認して2人で言葉が弾む光景もあった。一連の場面に、あらためて2人の相性を思い、5年前を思い起こすことにもなった。
2019年7月、2人は名古屋市内の邦和スポーツランドのリンクで2人はトライアウトを実施し、お互いに相性の良さを直感しペアを結成、スタートを切った。
それから約3カ月、NHK杯は直感の正しさを確認する機会となった。
「出場選手を見て『また最下位か』と思っていました」(木原)という中、目標としていた得点を大きく上回り、5位となったのだ。
実はフリー当日の公式練習ではうまく行かず、三浦は落ち込んでいた。それを見ていた木原は朝食に誘った。
「スケートに関係ない、どうでもいい話をしました」(木原)
その時間を持つことで「落ち着いた」と言う三浦は、「実は心が折れそうでした」と明かした。苦笑する木原に「笑わんといて」と返す一幕も、当時27歳と17歳という年齢の違いをも感じさせない、2人の相性を思わせた。
何よりも得られた手ごたえの大きさは、木原の次の言葉に込められていた。
「自分たちもできるんだというのが分かりました。ペアに転向して点が出ず、向いていないのかなと思っていましたけど、やればできるんだと思いました」
木原は2013-2014シーズンからペアで戦ってきた。でも成績が上がらないことで、自分自身の適性を疑うこともあった。それが払拭されたのである。