日本のペアの歴史を築く

 その2年後、2021年のNHK杯で3位となったときの言葉も象徴的だ。

「精神的に強いです。練習でも試合でも引っ張ってくれて、日常生活ではとても楽しいです」

 と、三浦が木原について話すと、木原は三浦についてこう話した。

「120%信頼しています。メンタルの強さは見習いたいです。ただ、リンク以外では忘れものが多かったり、詰めがしっかりしていないので、そこはしっかりしてほしいです」

 以降、2人は直感と確信を大切に育ててきた。その後、数々の活躍で日本ペアの新たな歴史を築いてきた。

 2022年北京オリンピックでは日本ペア史上初の入賞となる7位。翌月の世界選手権では日本人同士のペアでは史上初の表彰台となる銀メダルを獲得する。

 2022-2023シーズンは大きな飛躍を遂げる。グランプリファイナル、四大陸選手権、世界選手権を制する「年間グランドスラム」を日本フィギュア界で初めて達成したのだ。そして昨シーズンの世界選手権で2度目の優勝を飾っている。

 怪我で立ち止まらなければいけないときもあった。望んでいるような演技が実現できず、試合後にいらだちを見せるときもあった。

 それでもそのたびに立て直し、成長を期して取り組んできた。その成果がここまでの成績に反映されている。

 今大会のフリーでもミスがありながら自己ベストを更新できたのもまた、歩みの確かさを示している。

 結成から6年、日本のペアのこれまでの土壌――練習環境に恵まれないこと、指導者不足、選手層の薄さ等――を踏まえても、驚異的と言っていい成長を遂げ、世界の中心に位置するところにたどり着いた。

 その足取りをあらためて思わせ、たしかな存在感を示し、グランプリファイナルは終わった。

 今大会では「試合の週のトレーニングプランで新しいことを試していました」と木原は言う。それはこれから先を見据えての取り組みにほかならない。

 グランプリファイナルも次への成長の機会として捉えていた2人は、4年に一度の大舞台、ミラノ・コルティナオリンピックでの優勝を目指し、1日1日を過ごしていく。