樋口新葉 撮影/積 紫乃

(松原孝臣:ライター)

通算13戦目でGPシリーズ初優勝

 さまざまに彩られたフィギュアスケートの2024-2025シーズンにあって、存在感を示したスケーターに、樋口新葉がいる。

 樋口は1シーズンの休養のあと、2023-2024シーズンに復帰。それを助走期間とするように、復帰2シーズン目の2024-2025シーズン、たしかな成長をみせた。

 まず、グランプリシリーズの一つ、スケートアメリカで優勝を果たす。2016年に初めて出場して以来、通算13戦目で果たしたシリーズ初優勝だった。

2024年10月20日、スケートアメリカで、GPシリーズ初優勝を果たし、笑顔の樋口新葉 写真/アレン(共同)

 フランス大会でも2位となってシリーズ上位6名のみが出場できるグランプリファイナルにも7シーズン2度目の進出。さらには四大陸選手権、世界選手権の日本代表にも選ばれ、6位となった。

 成績にとどまらない。世界選手権のフリーで場内に喝采が響いたのが象徴するように、「魅せる」という部分でも樋口の演技は光を放った。さらにはリンクの内外での、取材の場を含めそのたたたずまいもまた、充実というべきか、ゆとりというべきか、表現はどうあれ、以前との変化を思わせた。

 樋口自身はこの1年をこう振り返る。

「世界選手権に出たいという目標はあったんですけど、自分が納得して一つ一つの試合を終えられるようなイメージで過ごしていました。それが最初から最後まで途切れることなく、滑り続けられたというのがすごく印象的です」

 さらに2024-2025シーズンの話が続く中、一見相反するような言葉が飛び出た。

「スケートって難しいな。スケートって楽しいな」

 それはこの1シーズンに限らず、これまでの歩みの末に生まれたものだった。