撮影/積 紫乃

(松原孝臣:ライター)

アイスショーの新たな歴史を築く

 時は来た。

 あれから1年あまり、アイスショー「滑走屋」の幕が再び開こうとしている。

「滑走屋」はフィギュアスケートの新たな歴史を築き、2023年春をもって競技生活から退いたフィギュアスケーター高橋大輔が立ち上げ、フルプロデュースするアイスショーだ。

 氷上だからこそできる、陸上では不可能な疾走感をはじめとしたフィギュアスケートの魅力を伝えたいという思いとともに、高橋が自ら大会の場に足を運んで見出した若手スケーターを数多く交えて開催された。そこには才能あるスケーターたちが活動を続けるための場にしたいという思いもあった。

 そんな願いを込めた公演は2024年2月に福岡で行われ、大きな反響をもって幕を閉じた。

 開催する目的であったフィギュアスケートならではのスピードが醸し出す迫力。多人数が複雑な動きをして氷上に描く構図の妙と美しい群舞。統一された世界観のもとに貫かれるストーリー性。スケーターたちの、独特な動作などがもたらす斬新な表現。

 振り付けにダンスと芝居が融合したエンターテインメント集団「東京パノラマシアター」主宰の鈴木ゆまを迎え、その力も借りつつ生み出されたショーは、これまでにないアイスショーとして、いやアイスショーというジャンルに収まらず新機軸のエンターテインメント作品として好評を博した。高橋は受け取った反響をこう振り返る。

「前回見てくださった方々の中には楽しんでくださったという意見が多かったです。アイスショーの新しい形が見られたと言ってくださっている方々もいて、うれしかったです」

 公演の模様は観客の人々に撮影することが許可されていた。その映像は多数SNSなどにアップされ、今日に至るまで観られ続けていることも反響の大きさを示している。

 その2度目となる公演が3月8・9日に広島(ひろしんビッグウェーブ)で開催される。

「今回の方がハードルは高いと思っています。2回目で、しかも再演なのでクオリティという部分でハードルが高いというのもあります。プロデュースと言った手前、すべて自分の責任になると思うので、『なんだ』って思われてしまったら、お客様はついてきてくれないですし、今まで応援してくださっている方、プラス新しい方にも足を運んでいただきたいという思いもあるので、クオリティという意味ですごい責任感を感じています」

 好評を博したからこそ、期待は大きくなる。1回目の反響を知り、足を運ぼうとする人もいるだろう。

 だから「前回詰め切れなかった部分」にこだわるという。