2025年3月4日、世界選手権に向けて練習する鍵山優真 写真/共同通信社

(松原孝臣:ライター)

3枠は当たり前ではない

 フィギュアスケートの世界選手権の開幕が近づいた。日本時間(以下同)で3月27日、夜中の0時5分に最初の種目として女子ショートプログラムがスタートし、3月30日の男子フリーで終える。

 毎年行われる世界選手権だが、今年は他の年と異なる意味を持つ。来年のミラノ・コルティナオリンピックへの、国別出場枠がかかっているからだ。出場する選手の成績により、最大3枠を得られる。3枠のためにはその国の上位2名の成績が「13」以内、例えば1位と12位、6位と7位なら確保できる。それを下回れば、2枠なり1枠なり、減ることになる。

 近年、質の高さと層の厚さを誇る日本だが、最近の歴史を振り返れば、2006年トリノオリンピックのときは男子が1枠しかなかった。また2018年平昌オリンピックの女子は2枠であった。3枠は当たり前ではない。だから、オリンピック前年の世界選手権に出場する選手たちは、無事大会に出場し、好成績をあげる責任を意識する。

 昨年12月の全日本選手権を終えて世界選手権代表に選ばれたあと、坂本花織はこう語っている。

「この世界選手権でオリンピックの枠が決まるので、精いっぱい演技したいなと思います」

 鍵山優真も言及した。

「来年のオリンピックの枠とりがかかっているので、しっかり気を引き締めて、このメンバーだったらいつも通りのいい演技をしたら確実に枠をとれると思うので、まずは自分のやることに集中して頑張りたいと思います」

 出場枠を意識しつつも、鍵山が言うように、それぞれの選手が力を出せれば、シングルはどちらも3枠に十分達することができる。だから納得のいく演技をすることが責任を果たす近道でもある。