2025年3月28日、世界選手権、女子シングルで2位の坂本花織(左)と3位の千葉百音 写真/Raniero Corbelletti/アフロ

(松原孝臣:ライター)

チャレンジャーの気持ちで

 アメリカ・ボストンで行われていた世界選手権が終了した。各種目で日本の選手が活躍する中、女子では表彰台に2人が上がるなど好演技ととともに成績を残した。

 この大会には来年のミラノ・コルティナオリンピックの出場枠がかっていたが、その成績により日本は無事、最大となる3枠を獲得することができた。出場枠獲得とともに、選手それぞれに糧を得た大会ともなった。

 坂本花織にとって、大会4連覇が懸かっていた今大会。ショートプログラムはコンビネーションジャンプの1つ目、トリプルフリップが2回転になったことが響き、5位発進となった。ただ、2つ目のトウループは3回転をつけたことでミスを最小限におさえ、トップとは逆転可能な範囲につけた。

 迎えたフリー。冒頭のダブルアクセルを雄大に成功させ、波に乗る。『シカゴ』の曲調に合わせた演技は場内をひきこんでいく。終盤、観客は立ち上がって歓声をおくる。演技を終えると坂本は何度も跳びはねた。ジャンプで回転不足が2つあったものの、好演技と言ってよかった。

 得点が出て暫定でトップ。残る4人の得点を待つことになった。トップのまま、最終滑走、ショート1位のアリサ・リュウ(アメリカ)を迎える。

 その演技もまた、素晴しかった。出場したスケーターのうち、ただ一人、すべての要素でGOE(出来栄え点)がプラス。まったくミスのない滑りで、優勝を決めた。

 リュウをハグを交わし、祝福した坂本は、涙を流し続けた。

「ほんとうにアリサの優勝はうれしかったんですけど、うれしいという気持ちの後に悔しすぎて今まででいちばん悔しかったなっていうのがあって、泣いても泣いても涙が止まらないぐらい」

 一方でこう語る。

「今回の結果を経験できたおかげで、チャレンジャーの気持ちで挑めます。次のミラノオリンピックに向けて、大事な経験だったんじゃないかなって思います」