左から坂本花織、樋口新葉 写真/西村尚己/アフロスポーツ

(松原孝臣:ライター)

自分で獲った枠をもう一回使いたい

 フィギュアスケーター樋口新葉が、来シーズンをもって競技から退くことを表明した。

 6月27日、フィギュアスケートのアイスショーがKOSE新横浜スケートセンターで開幕した。

 2025-2026シーズンのプログラムを披露する貴重な機会に、国際大会などで活躍するシニア、ジュニアのスケーターたちが出演。その1人、樋口新葉はショートプログラム『My Way』を滑り、喝采を浴びた。

 終演後、取材に応じた樋口はプログラムのテーマを尋ねられ、こう答えた。

「自分のスケート人生を表現するようなプログラムになっています」

 当初、振り付けのジェフリー・バトルとは他の曲でつくろうとしていたという。

「どうしても自分もそんなにしっくりこなかったり、たぶんジェフの中でもしっくりこない部分があって、いくつか迷っていたんですけど」

 試行錯誤するうちに、ジェフリー・バトルから提案されたのが『My Way』だった。

「『僕が引退するときに使いたかった曲なんだよ』って。自分の中で踊りやすそうだなというのがあったので、最後のシーズンを締めくくるのにちょうどいいプログラムになるなと思っています」

2025年6月27日、「ドリーム・オン・アイス」でショートプログラム『My Way』を演技する樋口新葉 写真/西村尚己/アフロスポーツ

「最後のシーズン」と言葉にすると、来シーズン限りと決めた理由を話す。

「昨シーズン、やめようかなと思いながら臨んでいたシーズンだったので、それもあって力を出せたのかなと思っているんですけど、世界選手権で自分で獲った枠を自分でもう一回使いたいなと思ったのが今シーズンまで頑張ろうと思ったきっかけです。

 北京オリンピックに行った時にもう一回オリンピックで滑りたいなと思ったのも今シーズン続けるきっかけになって、自分のメンタル的にも弱い部分がたくさんあるので、今シーズンまでって決めて全力ですべてを出し切れるとすごくいい結果も出せるんじゃないかなと思うので、それがすべての理由です」

 現在24歳の樋口は、2014年、中学2年生で出場した全日本選手権で3位になり大きな脚光を浴びた。以降、2022-2023シーズンを休んだのを除き、継続して国内外の大会で活躍を続けてきた。2018年世界選手権銀メダル、2022年北京五輪団体銀メダル、個人戦4位は、日本のトップスケーターの1人である証の1つだ。そして今、現役生活に区切りをつける日を明らかにした。