2025年11月2日、アイスダンス予選会、フリーダンスを演じる櫛田育良、島田高志郎 写真/森田直樹/アフロスポーツ
(松原孝臣:ライター)
始まってすぐ、転倒するも…
鮮烈な公式戦デビューを飾った。
12月に開催されるフィギュアスケート全日本選手権。その中の種目の一つ、アイスダンス予選会に出場した櫛田育良/島田高志郎の演技は、たしかな残像を残した。
シングルの選手として国内外の大会で存在感を放っていた島田と、成長著しいジュニアの櫛田がアイスダンスへの挑戦を表明したのは今年5月のこと。その発表は、これまでの存在感ゆえに大きな反響を呼んだ。
その後、アイスショーで初めて公の舞台に立ち、非公式戦を経て、この大会が公式戦のデビューとなった。
練習を始めて5カ月ほどしかない。2人はどんな演技をみせるのか——1日のリズムダンスは、切れのあるダンス、振りとともに、不安を打ち消し、期待を上回る滑りだった。得点は67.19。参考程度ではあるが、昨年の全日本選手権では2位に相当する高得点を出す。
演技後の取材で「振り返ってみて」と質問されると、2人はこのように答えた。
「いかがでしたか」(島田)
「最初は少し硬かった部分もあったんですけど、最後の方に行くにつれてどんどん楽しんで滑ることができてよかったです」(櫛田)
「その練習してきたことがそのまま出せたかなと思いますので、ひとまずはいいスタートが切れて安心しています」(島田)
笑顔が弾けた。
2日、フリーダンスを迎える。心なしかアイスダンスのスタート前から観客が増えたようだ。
ひと組ずつ演技が終わり、最終滑走の櫛田と島田がリンクに進み出る。激励の声と拍手が場内にこだまする。
スタート。始まってすぐ、2人は転倒する。
「地に足がついてなかったのもそうなんですけど、ちょっと壁が近いなと思っていたら、『あー』って」(島田)
でもそれをひきずらない。そこからの滑りは、華やかさと豊かな表現と、そして5カ月とは思えないレベルでの技と、それらがあいまって観る者を曲の世界へと誘いこんでいく。2人の長い手足をいかしたリフトも見事だ。
フィニッシュ。それもまた美しさに満ちていた。
得点は92.02、総合得点は159.21、2位以下に大きな差をつけて優勝した。